研究課題
平成27年度において、Cdk5rap1によってチオメチル化修飾されるmt-tRNAの同定及びチオメチル化修飾の分子機能の探索を中心に研究を行った。Cdk5rap1によって修飾されるmt-tRNAを検討するため、Cdk5rap1欠損マウス及び野生型マウスからmt-tRNAを単離し、質量分析法によって修飾の同定を試みた。その結果、Cdk5rap1欠損マウスでは、mt-tRNA(Phe), mt-tRNA(Tyr), mt-tRNA(Trp)及びmt-tRNA(SerUCN)の37位のアデノシンにおいてチオメチル化修飾が消失していることを突き止めた。即ち、Cdk5rap1が上記4種類のmt-tRNAを特異的に修飾することが明らかになった。一方、Cdk5rap1によるチオメチル化修飾の分子機能を検討するために、大腸菌を用いたレポーターシステムを利用した。具体的には、ルシフェーゼmRNAの開始コドンのすぐ後に、テストコドン及び終止コドンを人為的に挿入した。tRNAがテストコドンにおいてコドンとの結合が揺らぎ、終止コドンが読み飛ばされる(誤翻訳)時にのみルシフェラーゼが正しく翻訳されるプラスミドを作製した。大腸菌ではPhe、Tyr、Trp及びSerコドンに対応するtRNAがチオメチル化されるため、上記4種類のコドンをテストコドンとするルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。同プラスミドをCdk5rap1の大腸菌ホモログであるMiaBを欠損する大腸菌に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した結果、Phe、Tyr、Trp及びSerコドンにおいてルシフェラーゼの活性が顕著に高かった。即ち、チオメチル化修飾の欠損が誤翻訳を誘発していた。以上の結果から、Cdk5rap1がミトコンドリアにおいてmt-tRNA(Phe), mt-tRNA(Tyr), mt-tRNA(Trp)及びmt-tRNA(SerUCN)をチオメチル化すること、さらに、チオメチル化修飾が上記4種類のコドンにおける翻訳に必要であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度においてCdk5rap1によってチオメチル化修飾されるmt-tRNAを同定し、さらに、チオメチル化修飾が正確な翻訳に必要であることを明らかにした。当初の計画通りにCdk5rap1を分子機能を明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は当初の計画通りに、In vivoにおけるCdk5rap1の生理機能を検討する予定である。具体的には、Cdk5rap1欠損マウス由来の細胞を用いてミトコンドリア内のタンパク質翻訳を検討するとともに、Cdk5rap1欠損マウスの心筋や骨格筋のミトコンドリア呼吸活性を解析する予定です。
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