Cav1.2 L型Caチャネルは、心筋細胞や神経細胞を含む興奮性細胞に広く分布して、筋の興奮収縮連関や神経細胞の可塑性など、細胞機能に重要な役割を担っている。Cav1.2チャネルは、cAMP-PKA(Aキナーゼ)系の作用によりリン酸化を受けて、そのチャネル活性が上昇することが知られている。この分子機構として、Cav1.2チャネルのα1サブユニットのC末部には、PCRDとDCRDと呼ばれる部位があり、互いに結合してチャネル活性を抑制しているが、PCRD部位のリン酸によりその結合がはずれ、その結果、チャネル活性が上昇するという説がある。また、Cav1.2 チャネルには、Ca2+結合蛋白カルモジュリン(CaM)が結合していて、細胞内Ca2+濃度による2つの調節機構、即ち、Ca2+依存性増強(CDF)とCa2+依存性不活性化(CDI)、を担っており、チャネル活性は細胞内Ca2+の濃度変化に強い影響を受けている。 我々は、前年度までにAキナーゼによるリン酸化の調節がCa2+依存性調節の中心をなすCaMの作用とリンクしている可能性を新たに発見した。即ち、DCRDのC端側に続く領域がα1サブユニットのC末近位部のカルモジュリン結合部位と結合することを発見したのである。これにより、PKAのチャネル増強作用は、同C末部のチャネル抑制がリン酸化により取れて、CaMのチャネル活性化作用が増強されるという仮説を提唱した。今年度は、その仮説を検証するため、Cav1.2チャネルのPKAリン酸化部位のアミノ酸セリンをアスパラギン酸(phosphomimetic、SD変異)またはアラニン(phosphoresistant、SA変異)に置換したC末ペプチドとCaMの結合を調べ、低Ca2+濃度でのCaM結合がSD変異で高くSA変異で低いことを見出した。これは我々の仮説を支持する結果である。
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