研究実績の概要 |
2005年以降、消化管の粘膜上皮にも味蕾に存在する味覚情報受容伝達機構と類似の化学物質受容機構が存在し、消化管では、外界から侵入する種々の化学物質や腸内細菌などの常在細菌が有する膨大な遺伝情報を基に作られる化学物質の質や量をモニターしており、その情報により局所の消化管機能や生体全体のエネルギーバランスの制御、さらには高次脳機能制御にも関与しているのではないかと考えられるようになって来ている。近年、蛍光色素で標識したトランスジェニックマウスを用いて、化学センサーである腸内分泌細胞と神経系との直接的な接触を示す結果が報告されてきてはいるが、いまだ、脳-腸相関を駆動するための最初のステップとなる消化管での化学物質受容機構に関する知見の集積は十分とは言えない[PNAS, 105(43): 16767-16772, 2008; J. Clin. Invest., 125(2): 782-786, 2015]。 その一つの理由として、化学センサーとしての腸内分泌細胞には多種類の化学物質受容体が発現していること、それらが、異なる細胞内情報伝達系を駆動し、腸内分泌細胞と神経系との橋渡しとなる消化管ホルモンを放出していること、この腸内分泌細胞の消化管の部位による生理機能への関与の違い、さらに、腸内分泌細胞からは新たな化学伝達物質が発見されてきていることなどに起因している。 本年度は、我々が2006年に報告した短鎖脂肪酸受容体の消化管各部位による生理作用の相違や腸内分泌細胞に発現しているXenin25の消化管生理作用に及ぼす影響を検討し、化学物質受容機能の生理機能についての解析を行った。成果については学術雑誌や学会で報告した。
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