研究課題/領域番号 |
15K08183
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
新里 直美 京都学園大学, 健康医療学部, 教授 (00237645)
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研究分担者 |
丸中 良典 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127036)
宮崎 裕明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30360027)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ENaC / proteasome / p97 / ERAD / p38 |
研究実績の概要 |
腎遠位尿細管・集合管での上皮型Na+チャネル(epithelial Na+ channel; ENaC)を介するNa+再吸収は、体液量・血圧調節に重要な役割を果たし、アルドステロン・バゾプレッシンなどのホルモンや浸透圧ストレスなど、様々な因子により緻密に制御されることが知られている。我々は、これまでに腎遠位尿細管・集合管上皮のモデル細胞であるA6細胞で、アルドステロンによるENaCの膜発現制御にp38が極めて重要な役割を担っていることを報告してきた。p38はENaCのユビキチン化を触媒するNedd4-2の制御因子であり、p38を阻害するとENaCのユビキチン化を介する分解が亢進して膜発現量が減少することを明らかにした。これまでの研究では、形質膜上のタンパク質(ENaCも含む)は主にエンドサイトーシスを介して細胞内のリソソームで分解されると考えられていたので、エンドサイトーシスを阻害する目的でダイナミン阻害剤を、細胞内での分解を阻害する目的でリソソーム阻害剤を作用させても膜発現量は回復しなかったが、p38阻害によるENaCの膜発現減少はプロテアソーム阻害剤によりほぼ完全に抑制されることから、ENaCはプロテアソームで分解されることを強く示唆する結果を得た。また、ENaCの分解誘導によりENaCがプロテアソームのサブユニットと共存することも示された。次に、膜タンパク質であるENaCがプロテアソームへターゲティングされるメカニズムとしてERADに類似のメカニズムを想定し、AAA+ATPaseであるp97の阻害剤を作用させると、ENaCの膜発現量が回復することから、ENaCのプロテアソームへのターゲティングを担う分子としてp97が関与する可能性を示す結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の研究計画では、1)ENaCのユビキチン化(モノユビキチン化かポリユビキチン化を識別)解析と2)ENaCのプロテアソームへの局在を確認することを研究目的としていた。平成27年度の研究ではENaCはポリユビキチン化されており、プロテアソームのサブユニットの1つであるRpn10と共局在し、ENaCの分解誘導時に共局在する量が増大することを明らかにした。さらに、平成28年度の研究目標であるENaCの逆行輸送(膜からの引き抜き)を担う因子と考えたp97との関連性についての研究も行い、p97阻害剤はENaCの分解を有意に阻害し、ENaCを管腔側膜上に蓄積させることも見出しており、当初の計画より進展している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、申請した研究仮説に従って研究を進めて順調に進行していることから、ある程度仮説が正しいことが明らかにありつつある。そこで、今後は現在の仮説に基づいて研究を進めながら、証拠となるデータを慎重に蓄積させていくことを念頭に研究を進めようと考えている。また、研究も研究計画より進展しており、このまま研究を進めて研究成果を発表していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬・研究器具などが予定より安価で購入でき、研究が仮説に基づいて順調に進んだために最低限の試薬や器具で良好な結果を得ることができたので、差額として次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、28年度の研究計画に基づいた研究に必要な試薬・器具の購入に充て、研究を効率良く、確実に行うために使用する予定である。
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