研究実績の概要 |
① Acid-inducible H+-leakの特性。細胞外pH (pHo) < 5.5で活性化されるH+-leak電流とH+ uncoupler分子の電流特性を比較した。acid-inducible H+-leakが検出されないCOS7細胞にFCCP(H+ uncoupler試薬)を添加すると広いpHo範囲(4.5 - 7.6)に渡って可逆的に電流が生じた。FCCPの電流電圧曲線は、細胞内外のpHが等しい場合(pHo = pHi)はlinearであったが、pHo > pHiでは外向き整流性、pHo < pHiでは内向き整流性を示した。また、ミトコンドリアで同定された内在性uncoupler分子 (UCP蛋白)を抑制するヌクレオチド(GDP, ADP)はacid-inducible H+-leakを抑制しなかった。これらの結果から、pHo < pHiでの内向き整流性に共通点があるものの、両者の活性化機構や薬理学的特性は異なることが示唆された。また、リン酸、DPI (NADPH oxidase inhibitor)によるacid-inducible H+-leakへの影響は見られなかった。 ② Phagosomal pH(pHv)のオシレーション。pHvは<5.5とacid-inducible H+ leakの活性化閾値に近い値で一旦安定化し、細胞膜のacid-inducible H+-leakと同様な機構がphagosome膜にも存在しpHvレベルの決定に寄与する可能性が示唆された。pH spike (peak pHv > 6.5)その他のpHvオシレーションの頻度はホルボールエステル(PMA)やweak base (NH4Cl)で増加した。pH spikeのピーク値はpHoに依存し、PMAやweak baseでは変化しなかった。Vacuolin 1添加によって融合させた後、細胞をホモジェナイズして分離摘出したphagosomeでpH spikeが見られないことから、pH spikeの成因がphagosomeの再開口(exocytosis, re-open)であることがほぼ結論づけられた。 これらの結果の一部は生理研研究会(2017年9月)、米国生物物理学会(2018年2月)、日本生理学会大会(2018年3月)などで発表し、破骨細胞のH+ シグナリング機構におけるacid-inducible H+ leakを含む作業仮説を論文に投稿した(invited review, in press)。
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