研究課題/領域番号 |
15K08185
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
瀬尾 芳輝 獨協医科大学, 医学部, 教授 (90179317)
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研究分担者 |
竹井 元 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00708183)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳脊髄液 / 線毛運動 / 鰓線毛 / ムラサキイガイ / ビデオマイクロスコピー / MRI |
研究実績の概要 |
本研究は、脳脊髄液の流れの制御機構への脳室上衣細胞線毛運動の寄与を解明するために、二枚貝をモデル動物として、微視的な線毛運動による巨視的な流れの制御機構を、流体力学的解析により統一的に明らかにすることを目的とする。 平成29年度の研究では1)二枚貝の鰓側線毛運動による水流測定に最適化したビデオマイクロスコピーシステムにより、下外套腔側の鰓表層近くの水流速度と水流方向へのセロトニンの影響をin vivoで測定することに成功した。2)単離鰓糸を用いたin vitro実験により、鰓側線毛鞭毛打頻度へのセロトニン濃度依存性を確認した。3)PVP K90を用い人工海水の粘性を上げた際のin vivo での巨視的な水流への影響を評価した。4)セロトニンを作用させた上で、人工海水の粘性を増加させた際の影響をin vivo実験, in vitro実験の両面から評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度までの研究によって、in vivoでの巨視的な水流を間接的に評価する方法、および巨視的な流れを生み出す微視的な線毛運動を観察する方法を確立した。 平成29年度の研究では、セロトニン濃度依存的にin vivoでの水流、およびin vitroでの線毛の振動数が増加する傾向があることが分かった。さらに、0-1%のPVP K90により人工海水の粘性を上げると、in vivoでの水流が減少する傾向があることも分かった。しかし、人工海水の粘性を上げた際のin vivo水流の個体差は非常に大きく、粘性の影響を正確にとらえることが出来なかった。個体差の原因を検討したところ、人工海水の粘性を段階的に上げていく過程で、粘性の増加とは無関係にランダムな鰓線毛の活性化/非活性化が起こってしまうために、実験ごとの誤差が大きくなることが分かった。そこで、セロトニンを10-7 Mの濃度で作用させた際に最もin vivo水流が速くなる結果に着目し、10-7 Mのセロトニンによりランダムな鰓線毛の活性化/非活性化を抑えた上で、PVP K90により人工海水の粘性を上昇させた際のin vivo水流への影響を調べた。その結果、1% PVP K90により有意にin vivo水流が遅くなることが分かった。一方in vitroの線毛運動に対する人工海水の粘性の有意な影響は見られなかった。これらの結果は、微視的な線毛打と巨視的な水流の間にギャップがあることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
この3年間の研究は、ムラサキイガイの個体差の大きい事に翻弄されたが、ようやく、10-7 Mセロトニン刺激下で再現性を担保できることを確認できた。研究期間を1年間延長し、平成30年度には、MRIによるin vivo水流計測実験を追加し、流体力学的解析に必要な実験データを得て、解析をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、第45回日本磁気共鳴医学会大会(宇都宮市、平成29年9月14-16日、参加1700人)の大会長に指名された。コンベンション業者の力量不足などのため、研究分担者を含め教室員全員が4月から10月までの半年間、大会準備に忙殺され、本研究課題の実験をほとんど行うことができなかった。秋以降は実験に適したムラサキイガイが入手困難であった。本研究をより精緻に達成するために、1年間延長を申請した。平成30年度には、MRIによるin vivo水流計測実験を追加し、流体力学的解析に必要な実験データを得て、解析をまとめる。
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