本研究は、水頭症の原因を解析する為に、脳脊髄液の流れの制御機構への脳室上衣細胞線毛運動の寄与を解明するために、二枚貝をモデル動物として、微視的な線毛運動による巨視的な流れの制御機構を、流体力学的解析により統一的に明らかにすることを目的とした。 平成30年度までの研究によって、核磁気共鳴画像法(MRI法)によりin vivoでの巨視的な水流を間接的に評価する方法、およびビデオマイクロスコピー法により巨視的な流れを生み出す微視的な線毛運動を観察する方法を確立した。 平成30年度の研究では1)位相エンコードMRI法による、上下の外套腔側の水流速度と水流方向のin vivo測定実験数を重ねることができた。2)PVP K90を用い人工海水の粘性を上げた際のin vivo での巨視的な水流への影響を評価した。3)粘性を増加させた際の影響を、ビデオマイクロスコピー法によるin vitro実験の結果と比較し評価した。 以上の結果、海水の粘性を増加させたとき、特に水流速度の変化するときに、微視的な線毛運動と巨視的な水流の変化との間にギャップがあることが示唆され、従来の研究に新しい知見を加えたと共に、新たな研究課題を得た。また、ムラサキイガイの個体差が大きいことを鑑みても、二枚貝類にモデル動物としての有用性があると考えられる。
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