研究課題/領域番号 |
15K08186
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
幸田 和久 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40334388)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小脳 / 認知 / 情動 / 恐怖条件付け / Cbln1 / GluD2 |
研究実績の概要 |
近年、小脳が運動機能以外にも、認知、情動にも関与することが注目され、さらに自閉症などの精神疾患への小脳の寄与を示唆する報告が増加している。我々もヒトのGluD2遺伝子の異常が、運動失調に加えて、認知、言語、情動などの脳高次機能に関与することを明らかにした。そこで、Cbln1-GluD2シグナリング系をモデルとして、小脳におけるシナプス分子の異常がどのような神経回路を介して、高次機能や精神症状の発現に繋がるのかを解明するために、H27~H28年度は、Cbln1の遺伝子改変動物を用いて小脳の恐怖条件付けへの関与についての研究を行った。Cbln1は小脳顆粒細胞に圧倒的に強く発現するタンパク質であることが分かっているが、in situ hybridization及び免疫組織化学的解析による詳細な解析から、小脳以外にも前脳に微弱ながら有意な発現が見られたため、前脳特異的及び小脳特異的Cbln1欠損マウスを用いて、これらのマウスの恐怖条件付け検討した。前脳特異的Cbln1欠損マウスでは、文脈、手掛り依存性恐怖条件付け双方に障害が見られたが、小脳特異的欠損マウスでは、手掛り依存的恐怖条件付けのみが障害されていた。これらの所見は、げっ歯類においても小脳が運動以外の学習に関与していること、そして、Cbln1は平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成およびその可塑性に関与していることから、この回路が手掛り条件付けに関与することを示している。以上の成果はThe Journal of Neuroscienceに発表し、同誌のfeatured articleでも紹介された。また、認知機能に関与する小脳の領域を特定するために、小脳における活動依存性マーカーを探索しているが、前脳でよく用いられているArcは小脳では活用できないことが分かったので、現在、他の分子を探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の研究機関の異動のため、異動先での研究体制を整備、遺伝子改変動物の移送及び繁殖に時間を要している。また、小脳ニューロンの活動依存性マーカーは、前脳で知られている既存の遺伝子を利用できない可能性が大で、新たな活動依存性マーカーの同定に予定以上の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
恐怖条件付け以外の認知・情動行動の異常をGluD2、Cbln1欠損マウスあるいはその部特異的欠損マウスで引き続き探索するが、特に社会性をターゲットとする。小脳での活動依存性マーカーには、現在のところ得られているいくつかの候補遺伝子を検証する。これらが活用できないと判明した場合は、マイクロアレイを用いた解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究機関の異動のため、当初の予定よりも試薬、マウス飼育等への支出が減じた。
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次年度使用額の使用計画 |
社会性の行動実験の解析装置及び活動依存性マーカー探索のためのマイクロアレイへ支出を予定している。
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