研究課題/領域番号 |
15K08188
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
田代 倫子 東京医科大学, 医学部, 講師 (20398762)
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研究分担者 |
井上 華 東京医科大学, 医学部, 講師 (20390700)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグネシウムイオン / ラット心室筋 / 初代培養細胞 / TRPM7 / SLC41A1 / 組換えアデノウイルス |
研究実績の概要 |
マグネシウムイオン(Mg2+)は細胞内で300以上の反応の補酵素として働き、代謝やDNA合成でも重要な役割を担う。心筋細胞内のMg2+濃度調節系の破綻は心不全や不整脈の病態とも関わる。このため、細胞内Mg2+濃度の恒常性は維持されているが、その調節機構は解明されていない。本研究ではラット心室筋細胞の生理的なMg2+チャネルを同定するため、Mg2+輸送体分子として報告されている蛋白の発現を抑制し、Mg2+輸送能の変化を観察した。 Mg2+輸送体分子の発現抑制にはRNA干渉法を用いた。まず、Mg2+輸送体としての性質を持つTRPM7とSLC41A1の二つの分子に着目した。これらの遺伝子のshRNA(small hairpin RNA)と共に蛍光蛋白質(GFP)遺伝子を導入した組換えアデノウイルス(rAdV)を作成した。細胞にアデノウイルスが感染し配列が読まれると、GFPが発現するので遺伝子導入の標識となる。ラット心臓線維芽細胞において、rAdVを感染させた細胞から得られたmRNAをリアルタイムPCRで確認したところ、mRNA発現がTRPM7shRNAで40%程度、SLC41A1shRNAで20%程度に抑制されていた。成獣ラット心室筋細胞を初代培養し、rAdVを感染させ、48時間後に細胞のMg2+輸送能を観察した。標的分子蛋白の発現には関係ない配列からなるnon-targetingshRNAを導入した細胞では、心筋細胞を単離した直後の細胞から得られたMg2+輸送能が再現された。しかしながら、標的分子の遺伝子発現を抑制した細胞においてもMg2+輸送能の明らかな低下を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類の組換えアデノウイルスを作成し、生体投与の前に初代培養細胞への遺伝子サイレンシングを試みた。成獣ラット心室筋の初代培養細胞にTRPM7shRNA、SLC41A1shRNAを導入し、48時間後にMg2+輸送能を観察したが、有意な変化を認めなかった。蛋白発現抑制には48時間以上必要である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養細胞では形態の変化や線維芽細胞との融合が見られ、48時間以上培養した細胞ではMg2+輸送能の再現が困難であった。初代培養細胞ではなく、組換えアデノウイルスを生体へ直接投与して遺伝子サイレンシングを行う。投与後、48時間後に細胞を単離して実験する計画だったが、予定より飼育期間を延長する。TRPM7shRNAの組換えアデノウイルスはmRNAの発現抑制が弱いため、配列を変えて作り直すことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
組換えアデノウイルス作成期間が長く、試薬の使用が少なかった。器具などの消耗品は、現存する品から使用した。今年度の国際学会発表の旅費は所属機関より助成があった。
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次年度使用額の使用計画 |
主に組換えアデノウイルスの増幅、精製に関わる消耗品、解析のための試薬に使用する。 国際学会発表の旅費、論文発表経費に使用を予定している。
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