本研究では,CAPSタンパク質がオキシトシン(OXT)の分泌に寄与するかどうかを明らかにすることを目指している。本研究期間においてCAPS2ノックアウトマウスの血中OXT濃度が野生型マウスに比べて減少していること,OXT分泌部位である脳下垂体中のOXTレベルがCAPS2ノックアウトマウスにおいて増加していること,OXTニューロンが存在する室傍核においておよそ20%の OXTニューロンにおいてCAPS1の発現があることを明らかにした。また,OXTニューロン特異的にCreリコンビナーゼを発現するOXT-Creマウスを作成し,これにCAPS1-floxマウスを交配することで,OXTニューロン特異的にCAPS1をノックアウトしたマウスを作成して同様に血中および脳下垂体におけるOXT量を測定したところ,CAPS2ノックアウトマウスと同様にコントロールマウスと比較して血中で減少,脳下垂体で増加することを明らかにした。さらにOXT-Creマウスを用いてOXTニューロン特異的にチャネルロドプシンを発現し,光遺伝学を用いた行動解析とCAPSタンパク質の関与を探索する目的で,アデノ随伴ウイルスを用いたチャネルロドプシン発現系の構築を行なった。残念ながら行動解析を行うところまで技術を高めるまでに至らず,さらにin vitroにおけるOXT分泌イメージングの系を確立することもできなかったが,今後はCAPSタンパク質がOXT分泌にどのように寄与するかについて,イメージング,電子顕微鏡による形態学的観察および行動学的観察により明らかするべきと考える。
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