研究課題/領域番号 |
15K08198
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
内田 邦敏 生理学研究所, 細胞器官研究系, 助教 (20581135)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 温度感受性TRPチャネル / 細胞内局在 / 人工再構成系 |
研究実績の概要 |
細胞膜脂質の流動性を変化させた時のTRPチャネル活性の違いを検討した結果、methyl-β-cyclodextrinによってコレステロールを除去すると、TRPM8チャネルの活性は増強し、TRPV1チャネルの活性は減弱した。その他の温度感受性TRPチャネルに対しては大きな作用はみられなかった。また、細胞骨格の影響を検討するためにcytochalasin Dの作用を検討した結果、TRPV1、TRPM8ともにチャネルの温度依存的な活性化に大きな変化はみられなかった。 温度感受性TRPチャネルの局在並びに、刺激・温度依存的な局在変化をEGFPタグ付き温度感受性TRPチャネルを用いて検討した。これまでに、TRPV1、TRPM8及びTRPM5のタグ付きタンパク質用の発現ベクターを作製した。このプラスミドをHEK293T細胞に強制発現させ、細胞内局在を検討した。その結果、いずれのチャネルも脂質ラフトを標識するコレラ毒素Bサブユニットと共局在していた。TRPM8に関しては、細胞内小器官にも強い局在がみられた。また、温度を上昇させた時の局在の変化を検討した結果、TRPM8は温度上昇のみによってその膜局在が変化することがわかった。一方、TRPV1並びにTRPM5の局在は42度まで温度を上昇させても変化しなかった。 温度感受性TRPチャネルのうちでTRPM3並びにTRPM5の精製、並びに人工脂質二重膜への再構成系の確立を行った。TRPM3の解析を行った結果、TRPM3は人工脂質二重膜の系では温度依存的な活性化が認められなかった。また、TRPM5はカルシウム依存的な活性化電流を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部、次年度に予定していた実験を実施しているが、概ね計画書に記載した通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
脂質の成分を完全にコントロール可能な脂質平面膜法を用いて、脂質と精製した温度感受性TRPチャネルタンパク質のみのシンプルな実験系を構築し、電気生理学的手法を適用して様々な組成の脂質膜での温度依存的なTRPチャネル活性の変化を検討する。具体的には、電位依存性、活性化電流の大きさ、活性化温度閾値、Q10値(温度依存性の指標)に関して比較検討をする。さらに単一チャネル電流を測定し、channel conductance、開口確率、開口時間などTRPチャネルの性質についても検証する。脂質がリガンドとして機能する可能性は、用量反応性を検討し、シグモイド曲線で近似することで行う。細胞環境を再現するために、非対称な脂質二重膜を用いた検討も行う。 蛍光温度プローブの開発が進み、細胞内温度を正確に測定できるようになり、細胞内温度は局所的に変化することも明らかになりつつある。この細胞内局所温度変化が先に明らかにしたような細胞膜脂質-膜タンパク質相互作用のような変化に繋がる可能性を検討する。共焦点レーザー顕微鏡を用いて、温度、細胞膜及びTRPチャネルタンパク質の動態、局在を同時測定により観察する。先に明らかにした作用と異なる可能性が示唆された場合は、その可能性を人工再構成系を用いて再度検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系の構築及び予備検討のために来年度に予定していた研究の一部を今年度と入れ替えて実施する必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に消耗品、特に電気生理学関連消耗品(チャンバー、精製脂質)、遺伝子導入試薬などの支出にあてる。
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