研究課題
平成29年度はまず表皮最表層のケラチノサイトの膜電流の解析を行った。平成28年度までの研究によって温度感受性TRPチャネルの一種であるTRPV3が表皮角化細胞の最表層において機能的に高発現していることが示唆されていたが、それを実際に確かめるために単離角化細胞(最表層)において温度感受性電流の測定を行った。その結果、報告されているTRPV3の活性化温度閾値である31度付近を境に高温側で活性化する電流が観察された。細胞内Ca濃度の測定、およびノックアウトマウスを組み合わせた結果、TRPV3の活性化単独では角化を誘導するシグナルとはならないが、TRPV3がないと角化のシグナルが進みにくいことが明らかになった。以上のことからTRPV3が角化において重要であるが、それ以外の刺激によるシグナルが必要であることがわかり、間接的に機械刺激受容体チャネルPiezo1による機械刺激受容の重要性が示唆された。また、平行して表皮特異的Piezo1ノックアウトマウスの作成を試みた。まず平成28年度に購入したPiezo1-loxPと理化学研究所から供与されたK5-Creマウスを掛け合わせることを試みた。しかしながら理研由来のK5-Creがこちらの環境に適応しなかったため断念した。次に熊本大学CARDより凍結精子を購入し、生理学研究所・遺伝子改変動物作製室において個体化を行った。その結果、マウスは環境に適応した。現在Piezo1-loxPとの掛け合わせを行っている。今後、表皮特異的Piezo1ノックアウトマウスを作成し、表皮角化におけるPiezo1の役割の詳細なメカニズムを解明したい。
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The Journal of Physiological Sciences
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