研究課題
染色体DNAは、酸化ストレスや放射線などの環境ストレスによって損傷し、一部で変異が挿入され、アミノ酸配列が変化する。これらの遺伝子変異が生殖細胞に伝わる場合には遺伝病となり、出生後の環境ストレスによる体細胞変異では、特定の臓器不全などの疾患になる。癌や心筋症は、これらの体細胞変異によって引き起こされているが、疾患部位の採取が困難なことや血管など正常組織混入の問題があり十分解明されてはいない。遺伝子変異のモデル疾患として孤発性(家族歴のない)拡張型心筋症の原因変異の同定を次世代シーケンサーで行った。凍結サンプルをビーズ破砕で抽出することで高純度DNAの精製に成功し、微量組織から次世代シーケンス解析を可能にした。さらに既知の遺伝子変異を高速に解析する方法としてアンプリコンシーケンス法を開発し、10ngのゲノムDNAを1本のチューブで2986遺伝子を同時に増幅できる手法を開発した。次世代シーケンスの最適なDNA抽出を行うため組織の破砕方法を検討し、この家族歴のない拡張型心筋症からの組織および正常血液からDNA の精製を行った。既知の心筋症原因遺伝子に対するパーソナル型次世代シーケンス解析: これまでに心筋症や不整脈など心臓疾患を発症することが報告されている57遺伝子(Elizabeth M. JCI, 2013)の2987領域に対するプライマー設計を行い、独自のカスタムパネルを作製した。このマルチプレックスPCRで57 遺伝子全領域(2987産物)の 98.3% をカバーし、平均カバレッジ200以上の良好な結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
凍結サンプルをビーズ破砕で抽出することで高純度DNAの精製に成功し、微量組織から次世代シーケンス解析を可能にした。さらに既知の遺伝子変異を高速に解析する方法としてアンプリコンシーケンス法を開発し、10ngのゲノムDNAを1本のチューブで2986遺伝子を同時に増幅できる手法を開発した。7例のサンプルを次世代シーケンサーで解析し、世界で初めて生存時の拡張型心筋症の患者さんに存在する3箇所のアミノ酸配列に変化を起こす新規変異を発見した。
既知の遺伝子変異では説明ができない心筋症も存在しており、未知の体細胞遺伝子変異を検出するために微量での全ゲノム解析を行う必要がある。現在、MDA法などが報告されているが、様々な問題が見つかっている。これらの問題を解決し未知の体細胞遺伝子変異を解明する必要がある。
次世代シーケンサーの試薬が不良品であり、交換対象になったが、試薬の到着に2ヶ月以上必要だったため。
既知の遺伝子変異が検出されなかったサンプルについて全ゲノムの遺伝子解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件)
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