研究課題
平成27年度から28年度にかけて行った研究では、骨格筋細胞へのパルミチン負荷によって筋細胞からCXCL1が分泌することが示された。また、CXCL1がNotch1およびNotch2シグナルを介してサテライト細胞の分化を促進して筋骨格筋損傷を軽減する可能性を示し、恒常性を維持するマイオカインである可能性を示唆した。平成29年度は、パルミチン酸によるCXCL1発現と、CXCL1がNotchシグナルに作用する細胞内メカニズムについて詳細な検討を行った。筋細胞へのパルミチン酸によって酸化ストレスとともにNF-kappaBシグナルの活性化が惹起されるが、酸化ストレスが直接NF-kappaBシグナルを活性化する可能性は低く、別の経路が関与する可能性が考えられた。また、CXCL1のマイオカインとしての作用を再検討するため、CXCL1中和抗体投与を行い、サテライト細胞の筋管形成に及ぼす影響を調べた。CXCL1中和抗体によって筋管形成は有意に抑制されたものの、その効果はCXCL1ノックダウンと比べてかなり低かった。このことから、CXCL1は筋細胞外に分泌されてマイオカインとして機能するだけでなく、発現細胞自身の内部でも作用する可能性が示唆された。また、CXCL1免疫染色によって、筋管だけでなく未分化な筋芽細胞においても、パルミチン酸によってCXCL1発現が誘導されることが示された。以上より、CXCL1はパルミチン酸負荷によって骨格筋およびサテライト細胞で発現する可能性が示された。CXCL1は自己/傍分泌で作用するマイオカインであるだけでなく、発現細胞自身の内部でも作用し、Notch1/2シグナルを介して筋管分化を誘導する可能性が推察される。
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Acta Physiologica
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10.1111/apha.12975