研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究の成果: 前年度までに、CKId/eの欠損により温度補償性の減弱が見られることが明らかとなり、CRISPR/Cas9システムによるCKId/e リン酸化ターゲット遺伝子欠損株の作製を行った。このターゲットタンパク質のCKId/eによるリン酸化が温度補償性制御に関与しているかどうかを調べるため、欠損させたターゲット遺伝子を異所性に発現させるadd back実験を行った。当該遺伝子のadd backによって遺伝子欠損によるリズム異常がレスキューされることを確認し、レスキュー株の概日リズムをさまざまな温度条件下で調べたところ、温度補償性も保たれていることが分かった。本実験系において、野生型遺伝子の代わりに変異体をadd backすることによって、温度補償性に影響を及ぼす変異の探索に応用することができると期待された。ドメイン欠損やアミノ酸置換などの様々な変異体を用いることで、温度補償性の成立機構をより詳細に調べることが可能であると考えられる。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果: 哺乳類概日時計の転写翻訳フィードバックループに着目し、概日リズムの温度補償性成立のメカニズムを明らかにするため、時計遺伝子の欠損細胞を作製し、リズム周期長の温度依存性を調べた。その結果、周期長が大きく変化するCRY1,CRY2の欠損では温度補償性が保たれていたのに対して、CKId/eの欠損では温度補償性の減弱が見られた。CKId/e二重欠損細胞は生育できないと見られたため、CKId/eのリン酸化ターゲットに標的を絞り、遺伝子欠損株の作製と、欠損遺伝子を異所性に発現させる系を確立した。この系を用い、温度補償性に影響する変異を探索することで、哺乳類温度補償性の解明に繋がる知見が得られることが期待される。また、本研究成果を学術論文として公表した(Tsuchiya et al. J Biol Rhythms 2016)。
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