研究課題/領域番号 |
15K08215
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
横山 徹 自治医科大学, 医学部, 助教 (80425321)
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研究分担者 |
南 浩一郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (70279347)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
上園 保仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
宮野 加奈子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (50597888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生理学 / がん / 体液調節 / 電気生理学 / 行動生理学 |
研究実績の概要 |
本研究は進行がんモデル動物等を使用して、がんの種類や病期における全身的な病態の変化、とくに病態の進行に伴って発生する痛みなどの様々な症状やストレス反応と中枢の体液調節系との関係、その作用機序を明らかにすることにより、がんに苦しむ患者の全身状態の改善、生活の質改善に結びつけることを目的として研究を進めています。 27年度の検討で、我々は、進行がんモデルラットでは、正常ラットと比較して摂食量や飲水量が減少しているだけでなく、中枢の体液調節を行う視索上核へのパッチクランプ法を用いた電気生理学検討で、高浸透圧や飲水を引き起こすペプチドへの反応が低下していることを見出しています。28年度はこのデータをさらに増やし、海外論文への投稿の準備をすすめました。現在投稿をしているところである。 また、がんの病態の進行に伴い発生する痛み等の反応の変化について検討も行ってきました。近年、臨床現場では、解熱鎮痛薬として使用されるアセトアミノフェンと医療用麻薬の併用によりがん患者の疼痛コントロールが改善されることが報告されています。アセトアミノフェンによる鎮痛作用にはその代謝産物であるAM404が重要であることが考えられるが、アセトアミノフェンと医療用麻薬が作用するオピオイド受容体の直接的な関連性については明らかにされていないのが現状です。そこで、アセトアミノフェンならびにAM404のオピオイド受容体に対する作用について解析を行っている。解析は細胞内外のインピーダンス(電気抵抗)変化を測定することでオピオイド受容体の活性を評価できるシステムを用いて行っており、成果を学会等で報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
28年度は27年度行ってきた研究をさらに進めて、がんの病期や病態における鎮痛薬や摂食関連ペプチドの反応、反応に変化がある場合は、その作用機序を詳しく検討していくことも研究目的の一つとして予定していました。28年度は27年度に行った、進行がんモデルでは正常モデルラットに比べ、摂食量や飲水量が減少していることに加えて、中枢の体液調節系の反応が変化しているという成果に対して、さらにデータを加え、まとめを行い、海外論文に発表につなげる作業を行った過程で時間が予想以上にかかってしまいました。よって、がんの病期や病態における鎮痛薬や摂食関連ペプチドの反応の検討があまりすすんでおらず、進捗がやや遅れていると思われます。
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今後の研究の推進方策 |
29年度はこれまで行ってきた研究のデータをまとめて、研究の成果を学会や海外論文等で報告していくことはもちろん、がんの進行が中枢の体液調節機構に影響を与える機序や、影響を与える物質等の解明を進めていく計画を立てています。さらに、摂食や痛み、ストレスに関連するホルモンやペプチド等の投与が進行がんに伴う中枢の体液調節機構の変化をどのくらい遅らせることが出来るか等、治療分野へと向けた検討に結びつけていく計画も進めていく予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究は、これまで我々が行ってきた先行研究や平成27年度に購入した動物や試薬、物品等を一部使用することができ、新たに購入する物品が計画を下回ったために次年度への繰越金が発生しました。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、進行がんモデル動物作成のためのヌードラットの購入の他、がんの進行が中枢の体液調節系に与える影響やその作用機序を解明するため、摂食や痛みに関係するペプチドや試薬の購入を予定しています。また、成果報告として学会等での発表や論文投稿などにも研究費を使用する予定です。
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