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2015 年度 実施状況報告書

精神疲労と身体疲労の鑑別が可能なヘルペスウイルスを利用した疲労測定法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K08216
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

近藤 一博  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70234929)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード身体疲労 / 睡眠不足 / 運動負荷 / 肝臓 / 炎症性サイトカイン / mRNA / 血液検査
研究実績の概要

身体疲労特異的なバイオマーカーを検索するために、マウスに疲労負荷を行った後、各種臓器での遺伝子発現変化を検討した。従来、マウスやラットを用いた疲労負荷実験では、数百から数千種類の遺伝子が変化することが報告されており、疲労負荷実験では疲労に特異的な遺伝子変化をとらえることは難しいとされていた。この欠点を克服するために、疲労現象を生じさせることのできる最小の疲労負荷条件を見いだした。この負荷条件は、4時間~8時間の不眠というもので、自発運動量の低下によって客観的に評価可能な疲労現象を観察できた。またこの条件は、従来の疲労負荷において用いられていた5日~1週間の不眠という条件に比して遥かに軽い負荷であった。この系を用いて疲労に関係する遺伝子発現変化をmRNAに対するReal-time PCR法を用いて検討した。検索の候補とする遺伝子は、疲労による再活性化が確認されているヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化に関係する遺伝子とした。遺伝子発現変化は主として肝臓で生じ、炎症性サイトカインの誘導に関係するシグナル伝達経路が活性化していることが判明した。同様の遺伝子変化は、運動負荷においても観察され、これらの遺伝子発現変化が、不眠負荷にも運動負荷にも共通する身体疲労特異的なバイオマーカーとなることが示唆された。ただ、今回見いだされた身体疲労特異的なバイオマーカーとなる因子は、シグナル伝達経路に関係するものであり、主として細胞核に存在するものであった。このため、血清中の抗体やタンパクの検査を用いてこられを測定することは難しいと考えざるを得なかった。しかしその一方で、今回、肝臓を中心に観察された遺伝子変化の一部は末梢血細胞においても観察され、ヒトにおいては血液中のmRNAを測定することで検査が可能であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス実験において身体疲労に特異的なバイオマーカー候補を見いだし、これが末梢血中でも観察可能であることを示すことができた。平成27年度の研究実施計画では、身体疲労特異的なバイオマーカーを見いだすことを目的としており、血液中に存在するmRNAあるいはタンパクまたはタンパクに反応する抗体を候補としていた。今回の研究では、血液中で身体疲労のバイオマーカーとなるmRNAの測定が可能なことを示すことができた。これは、本研究の目的である精神疲労と身体疲労の鑑別が可能な疲労測定法の開発に向けて、重要な進展であると考えられる。また、同時に血液中のタンパクや抗体は身体疲労のバイオマーカーとなり難いことも示すことができた、これも今後の研究開発において重要な知見であると考えられる。

今後の研究の推進方策

今回の研究によって、身体疲労に関係する遺伝子変化は血液中のmRNAを測定することで検査が可能であると考えられた。このため、身体疲労のバイオマーカーに関しては、mRNAを中心にバイオマーカーの確立を図る。精神疲労のバイオマーカーに関しては、当初の予定どおり、HHV-6の潜伏感染遺伝子タンパクであるSITH-1に対する免疫学的な検出系の感度の向上を図る予定である。方法としては、当初の予定どおり、感度の高いELISA法の開発を行う。また、これまでの研究から、SITH-1に対する抗体が何らかの疾患特異的なエピトープやSITH-1タンパクの立体構造を認識する可能性も出てきた。平成28年度は、これらのことも考慮して、精神疲労のバイオマーカーとなる抗SITH-1抗体の高感度で特異性の高い測定法を開発する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が77円となった理由ですが、物品購入の際にできるだけ低価格で購入できる業者を探したために、予定よりも低価格で購入することができたために生じたものです。

次年度使用額の使用計画

77円の差額は、次年度以降に有効に使用させて頂く予定です。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Development of Biomarkers Based on DNA Methylation in the NCAPH2/LMF2 Promoter Region for Diagnosis of Alzheimer’s Disease and Amnesic Mild Cognitive Impairment.2016

    • 著者名/発表者名
      Nobuyuki Kobayashi, Shunichiro Shinagawa, Tomoyuki Nagata, Kazuya Shimada, Nobuto Shibata, Tohru Ohnuma, Koji Kasanuki, Heii Arai, Hisashi Yamada, Kazuhiko Nakayama, Kazuhiro Kondo.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 11(1) ページ: e0146449

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0146449

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effects of nutritional supplementation on fatigue, and autonomic and immune dysfunction in patients with end-stage renal disease: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial.2015

    • 著者名/発表者名
      Fukuda S, Koyama H, Kondo K, Fujii H, Hirayama Y, Tabata T, Okamura M, Yamakawa T, Okada S, Hirata S, Kiyama H, Kajimoto O, Watanabe Y, Inaba M, Nishizawa Y.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10(3) ページ: e0119578

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0119578

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Association between DNA Methylation of the BDNF Promoter Region and Clinical Presentation in Alzheimer's Disease.2015

    • 著者名/発表者名
      Nagata T, Kobayashi N, Ishii J, Shinagawa S, Nakayama R, Shibata N, Kuerban B, Ohnuma T, Kondo K, Arai H, Yamada H, Nakayama K.
    • 雑誌名

      Dementia and geriatric cognitive disorders extra

      巻: 5(1) ページ: 64-73

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 疲労の尺度と疾病2015

    • 著者名/発表者名
      小林伸行, 近藤一博
    • 雑誌名

      臨床透析

      巻: 5(1) ページ: 64-73

  • [学会発表] Human Cytomegalovirus (HCMV) Latency-Associated Protein ORF152 Induces Calcium Influx and Inhibits Gene Expression in Central Nervous System2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Shimada, Nobuyuki Kobayashi, Naomi Oka, Masato Tamai, Kazuhiro Kondo.
    • 学会等名
      第63回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2015-11-22 – 2015-11-24
  • [学会発表] 睡眠時無呼吸症候群を対象とした、HHV-6、HHV-7の再活性化メカニズムの検討2015

    • 著者名/発表者名
      小林伸行, 青木亮, 嶋田和也, 玉井将人, 山寺亘, 岩下正幸, 伊藤洋, 中山和彦, 近藤一博
    • 学会等名
      第63回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2015-11-22 – 2015-11-24
  • [学会発表] HCMV潜伏感染タンパク質ORF152が神経機能に与える影響2015

    • 著者名/発表者名
      嶋田和也、小林伸行、岡直美、玉井将人、近藤一博
    • 学会等名
      第29回ヘルペスウイルス研究会
    • 発表場所
      長崎県長崎市
    • 年月日
      2015-06-04 – 2015-06-06

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公開日: 2017-01-06  

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