研究課題
疲労は労働、運動、精神負荷などの様々な原因によって生じ、体力や心身機能の低下をもたらす。疲労は精神的な原因によるものと身体的な原因によるものに大別できると一般的に考えられている。本研究では、精神疲労と身体疲労を鑑別して客観的に測定できる方法を開発し、それぞれの疲労の心身への影響や相互作用を明らかにすることで、疲労の予防・治療法の開発に繋げることを目的とした。我々は本研究および関連研究において疲労のメカニズムの研究を行い、疲労を発生させるシグナルの中心が真核生物翻訳開始因子2α(eukaryotic Initiation Factore 2α: eIF2α)のリン酸化であることを見出した。また、我々はHHV-6の再活性化がeIF2αリン酸化によって生じることを先に発見しているので、疲労負荷によるeIF2αリン酸化関連シグナルの亢進と、唾液中HHV-6の増加は同じシグナル伝達の促進をあらわしていることが判った。この知見を利用して、マウスの運動負荷、睡眠不足、ヒトにおける中枢神経の異常に由来する疲労を比較検討した。この結果、睡眠不足の疲労と運動負荷による疲労は本質的に同じもので、身体の疲労負荷によるeIF2αリン酸化が原因で引き起こされていることが判った。これに対し、中枢神経の異常に由来する疲労では、強い疲労感に反して、唾液中HHV-6の増加、即ち身体でのeIF2αリン酸化の増加は観察されず、疲労のメカニズムという観点からは、運動疲労と精神疲労との間よりも、運動や睡眠不足も含めた生理的な疲労と、脳神経の異常によって生じる疲労との間に本質的な違いがあることが確認された。そして両者は、疲労感の主観的な測定と唾液中HHV-6およびHHV-7による客観的な疲労測定法によって鑑別されることが判った。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Biochemical and biophysical research communications
巻: 486(3) ページ: 706-11
10.1016/j.bbrc.2017.03.102.