研究課題
本研究課題は、ストレス適応能力およびストレスの神経発達に対する影響を基礎薬学的に解明することにより、ヒトにおける疾患予防や治療に生かす方略を考案するために行った。これまでに、健常なマウスを豊かな環境下で飼育すると、脳内でペプチド発現が増加すること、そのうちの1つであるダイノルフィンA そのものをマウスに脳内投与すると、うつ様行動発現を抑制することを明らかにしてきた。一方、発達過程の中で胎生中~後期は、内外からの様々な刺激に対し非常に感受性が高い。マウス胎仔(胎生14日~出生日)にニコチンを曝露し、生後6~7週齢時に解析を行ったところ、断崖絶壁回避試験で観察される衝動性の亢進や物体随伴性注意試験における注意機能障害などの行動障害も誘発されることを見出した。さらに、前頭皮質における長期増強および細胞外グルタミン酸レベルの低下が認められた。そして、その障害の発現には、胎生期のα7アセチルコリン受容体を介した細胞増殖機能の低下が関与していることを見出した。この動物モデルを用いて、「ドラッグリポジショニング概念」を応用し、ガランタミンの治療薬としての可能性を検討した。その結果、ガランタミンの単回投与によって、衝動性の亢進、注意機能障害及び長期増強低下が有意に緩解され、これらはα7アセチルコリン受容体拮抗薬によって抑制された。以上のことから、内因性のペプチドによるストレス適応機能増強、また前頭皮質機能の低下に対するアセチルコリン受容体刺激による改善作用を見出した。今後はこれらの医薬品への応用を検討したい。
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