研究課題/領域番号 |
15K08219
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
宮崎 誠 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (10319593)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬物治療 / 交替勤務 / 時間薬理 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究は,生体リズムの変動および薬物の体内動態(PK)と薬理効果(PD)との関係を数理的にモデル化することで,交替勤務従事者に対する新しい糖尿病薬物治療計画を設計するための研究基盤を確立することを目的とする. 暗期8時間/明期16時間の環境下で2週間飼育したラットにおけるトルブタミド(TB)のPK-PD関係は,1:1の明暗サイクル下で飼育したラットとは異なった.そこで,1:1の明暗環境下でラットを飼育した(Day 0)後,Day 1に明暗環境を8時間後退させ,以後は同じ明暗環境でDay 12まで維持した.Day 0~12の間,Day 0のZeitgeber Time(ZT)12時に相当する時刻にTBを各々単回静脈内急速投与した.その結果,各日におけるTB投与後の最大血糖低下効果は,Day 0とDay 2が同等であったにもかかわらず,Day 3以降はDay 12にかけて減弱する傾向にあった.これまでの研究結果を考慮すれば,この変化は生体リズムが明暗サイクルに対する脱同調状態から同調するまでの過程のPK-PD関係の変化に起因するものと考えられた.特に見かけ上PK-PD関係が変化していないDay 1やDay 2における今後の詳細な検討が必要と考えられた.一方,明暗環境の後退によって摂餌時刻が変化している可能性が考えられたため,明期または暗期に摂餌時刻を制限し2週間飼育したラットを用いて,ZT2またはZT14投与時のTBの体内動態について検討した.血中総TB濃度推移は摂餌時刻に関係なくZT2よりもZT14で高く推移した.しかし,ex vivo法で検討したTBの血中タンパク非結合率はZT2で有意に高く,血中非結合形濃度推移はZT4よりもZT2で高いと考えられた.これはタンパク結合親和性に投与時刻差が見られなかったことから,血中タンパク質濃度の日内変動の影響を受けたものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の検討結果から,当初の予定とは若干異なる明暗環境で動物実験を行っているが,進捗状況に影響を与えるものではない.しかし,本年度中盤において本学共同教育研究施設のUPLC-MSがハードウェア上の故障とメンテナンスのためしばらく利用することができなかった.TBの血漿中タンパク結合率は非常に高いため,血漿中のタンパク非結合形濃度を定量しタンパク結合率を決定する上で一般的なHPLCを代替とすることはできず,UPLC-MSは必須である.このため検討項目の順番を予定と入れ替えるなどにより対応した.現在は修理が完了し従来通りの利用が可能となっている.以上より判断し,おおむね順調と考える.
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今後の研究の推進方策 |
ラットの飼育環境の明暗を8時間後退させ,動物が環境に同調するまでの体内動態および薬理学的効果について,引き続き検討を行う.現在,特に注目している点は,明暗環境後退後の数日間は見かけ上のPK-PD関係は変動していなかったことである.しかし,その後の薬効の経日的な減弱を考慮すれば,この数日間に以後のPK-PD関係の変化に結びつくような影響がインスリン分泌能やインスリン感受性などに生じている可能性がある.これらを明らかにするために,血中薬物濃度-時間推移や血中タンパク結合率,血中タンパク質濃度,血中インスリン濃度の基底値および薬物投与後の経時推移,糖の静脈内負荷に対する反応などに関する情報を収集・蓄積する予定である.これらの情報からPK-PD関係の変動をおよそ知ることができると考えられるが,必要であれば,これら以外の情報を得られるバイオマーカーについても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験結果に基づき,血中インスリン濃度の定量よりも血糖値測定を優先して行ったためと考えられる.実際,当該使用額は本研究で使用しているインスリン測定ELISAキットの2~3回分程度に相当している.
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次年度使用額の使用計画 |
当該金額は実験の優先順位から生じたものであり,翌年度には別途記した通り,血中インスリン濃度測定等に使用する.
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