研究課題/領域番号 |
15K08220
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究分担者 |
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 講師 (70388510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重力 / 前庭 / 筋 / 骨 / フォリスタチン / マイオスタチン / ビタミンD |
研究実績の概要 |
私共は重力変化やメカニカルストレスが筋と骨におよぼす影響を検討するために、前庭破壊後のマウスを、特殊遠心装置を用いて、3gの過剰重力環境下で飼育し、4週間後の骨格筋や骨の変化を検討したところ、過剰重力によりマウスのヒラメ筋重量や体重で補正した骨量の増加がみられ、その効果は前庭破壊により有意に抑制された。 これまでの知見により、重力による循環調節に前庭系とそれに続く交感神経系が関与することが示されてきた。そこで、交感神経を阻害するためにβ阻害剤のプロプラノノール投与を行い、3gの過剰重力環境下で飼育し、4週間後の骨格筋や骨の変化を検討した。プロプロパノール投与により、過剰重力によるヒラメ筋の変化は有意に阻害され、骨の変化に対しては、有意ではないが、阻害する傾向が観察された。これらの実験結果から、マウスにおいて、重力変化は前庭系とそれに引き続く交感神経の刺激が抗重力筋と骨の変化を惹起することが示唆された。 骨格筋で産生される体液性因子であるマイオカインが骨代謝を調節する機構の存在が知られている。私共は、これまで報告されている数種のマイオカインの発現を上記のマウスで検討したところ、ヒラメ筋においてその発現が過剰重力によって増加し、その増加作用が前庭破壊により解除される筋から産生される因子としてフォリスタチンが見出された。in vitroの実験により、フォリスタチンは筋細胞のタンパク合成系促進により筋量を増加させるのみならず、マイオスタチンの破骨細胞形成促進作用を阻害することにより、骨の細胞にも骨量が増加する方向に影響をおよぼすことを見出した。 一方では、糖尿病マウスおよびビタミンD欠乏マウスを用いて、これらのマイオカインの発現を検討したところ、ビタミンD欠乏の影響は明らかではなかった。しかし、ビタミンD欠乏は腓腹筋における糖尿病によるIGF-IとFGF-2の発現低下を増強した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重力変化により変化するいくつかの因子を見出しており、その解析が順調に進んでいる。また、病態モデルマウスを用いた検討も予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
メカニカルストレスが低下するマウスモデルとして、尾部懸垂マウスおよび片側坐骨神経切除マウスを用いて、不動によるメカニカルストレス低下の骨格筋、骨さらに筋・骨連携におよぼす影響を検討する予定である。さらに、種々の重力による影響の違いについても明らかにしていきたい。
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