| 研究課題/領域番号 |
15K08222
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| 研究機関 | 国際医療福祉大学 |
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研究代表者 |
升本 宏平 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (60580529)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 視交叉上核 / 室傍核 / 神経連絡 / 軸索伸長 / 体内時計 |
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| 研究実績の概要 |
哺乳類体内時計の中枢である視交叉上核は脳領域に時刻情報を伝え、その領域の概日振動の位相を制御する。しかしながら、視交叉上核の時刻情報がどの様に脳領域に伝わり、どの様に概日振動を制御しているのかは未だに明らかにされていない。これまでに申請者が独自開発した“移植培養系での振動再構成”によって、時刻情報伝達には物理的結合が重要であることがわかった。そこで本研究では、視交叉上核と室傍核領域の物理的結合を担う神経連絡、グリア細胞が時刻情報伝達機構においてどのような機能を担っているのか明らかにすることにした。
前年度までの研究において、室傍核領域由来のグリア細胞の移植では、室傍核領域の振動は回復せず、また一細胞レベルの振動もすぐに減衰、消失することから室傍核領域と視交叉上核の同期には神経連絡を介した時刻情報の伝達が必要であると考えられた。さらに、振動の回復を担う候補因子の探索のために、申請者たちが作成した網羅的遺伝子発現解析のデータベース（http://brainstars.org/）を参照し、時刻情報伝達因子の候補としてGABAに注目して研究を行った。
培養下の組織にGABA受容体のアゴニスト、アンタゴニストの投与を行うと振動へ影響を与えることが分かった。また細胞内Cl-濃度によってGABA受容体の反応は興奮性/抑制性が変化するので、細胞内Cl-濃度を変化させるのに重要なCl-トランスポーターを抑制したところ、視交叉上核と室傍核領域の振動の位相差に影響を与えた。このトランスポーターの発現は、データベースを参照後、in situ hybridization法を組織に用いて確認した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では物理的結合を介した時刻情報伝達機構について明らかにするために、1. 神経連絡及びグリア細胞が時刻情報の何を制御しているか、2. 時刻情報伝達の中継及び受容に概日時計は必要であるか、の2項目を軸として研究を推進してきた。
1．に関しては、時刻情報伝達における神経連絡の必要性を確認し、GABAが有力な時刻情報伝達物質候補であることを見出すことができた。その詳細は検証中であるが、解析手法の変更により当初予定より遅れていると考えている。
2．に関しては、室傍核領域におけるGABA受容体の反応に時刻依存性を確認することはできなかった。このことは時刻情報の伝達には受け取り側の概日時計は必要ないことを示唆しており、視交叉上核から放出される時刻情報伝達物質の位相によって、視交叉上核と室傍核領域の位相差が決まるのではないかと考えることができる。しかしながら、これに関しては概日時計消失マウスの導入ができなかったこともあり、これ以上の検証を行うことはできなかった。
前年度に所属を変更し研究環境が変わってしまったため、新たに実験系を立ち上げる必要が生じた。しかしながら新たに立ち上げた実験系が当初不安定であり、1データを得るまでの期間が想定よりも長くなった。また、解析手法の再検討を行った結果、1データの解析時間が増加し、実験系へのフィードバックが遅くなってしまった。以上のことから本研究は予定よりやや遅れていると考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
最終年度であること、また今年度に所属先を変更し研究環境が変わったことから、現在までに得られているデータを詳細に解析し論文化することを最優先にする。その上で、1．神経連絡及びグリア細胞が時刻情報の何を制御しているか、については視交叉上核と室傍核領域の振動の同調、位相差に対するGABAの役割についてさらなる検証を加え、時刻情報伝達物質であることを明らかにさせる。またGABA受容体は細胞内クロライドの濃度によって抑制、興奮性が変化する性質に着目し、昼行性・夜行性を決定づける因子であるか検証を行う。振動の同調、位相の同期はGABA以外の因子も担っていることが想定されるが、最終年度であることからGABAに焦点を絞り解析を進める。
2. 時刻情報伝達の中継及び受容に概日時計は必要であるか、については概日時計消失マウスを用いた実験を想定していたが、導入及び繁殖し使用するまでに時間を要するので行わないことにする。これまでの組織培養における研究によって、時刻情報の伝達には情報の受け取り側の概日時計は必要ないことが示唆されたが、生体マウスにおいても同様であるかGABAに関連する因子について検証を行う。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新たに立ち上げた実験系が不安定であり、1データを得るまでの期間が想定よりも長くなった。また、従来よりも詳細な解析が必要となり、得られた画像データから抽出する数値データ数を16倍に増やした。それに伴い解析手法の再検討を行った結果、1データの解析時間が増加してしまい、実験系へのフィードバックが遅れ、計画の遅延を生じた。そのため高価な消耗品を使用する組織培養を行う機会が減ってしまい、消耗品の使用量が予定より少なくなった。施設における共通試薬、消耗品の使用により、購入費が抑えられたのも一因である。
繰越分は次年度において、組織培養、免疫染色に必要な消耗品費、マウスの購入費に充てる。
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