研究課題/領域番号 |
15K08227
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三上 義礼 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員 (80532671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 一酸化窒素 / リアノジン受容体 / カルシウム / NICR / S-ニトロシル化 |
研究実績の概要 |
一酸化窒素(NO)は、生体内で産生されるガス状生理活性物質のひとつである。細胞内カルシウムストアである小胞体膜に局在する1型リアノジン受容体(RyR1)は、NOによるS-ニトロシル化修飾を介して活性化しカルシウムイオンを放出する。このNO-induced calcium release (NICR)と呼ばれる現象は、2012年に神経細胞において報告された(Kakizawa et al., 2012)。本研究では、RyR1が豊富に発現している骨格筋におけるNICRの生理的意義を明らかにする。同時にNICRの病態生理学的意義を明らかにし、筋疾患やサルコペニアに対する新しい治療法の提供をめざす。本年度は、以下の成果を得た。 1.S-ニトロシル化修飾を受けるRyR1の3636番目のシステインをアラニンに置換したRyr1C3636Aノックインマウスを用いて研究を行った。マウス胎児大腿筋より初代培養骨格筋細胞を作製し、変異RyR1の基本的性質を確認した。Ryr1C3636Aノックインマウス由来の骨格筋細胞であっても分化は正常であり、野生型と形態に差は見られなかった。電気刺激によってcalcium-induced calcium release(CICR)活性をカルシウム指示薬Fura2を用いて調べたところ、野生型マウスとノックインマウスの間に差は見られなかった。 2.マウス大腿筋から筋小胞体画分を精製しリアノジン結合アッセイを実施した。リアノジン結合能においても両者の間に差は見られなかった。 3.病的負荷をかけたマウスにおける筋損傷・回復について解析を進めている。 Ryr1C3636Aノックインマウスは骨格筋の基本的な性質に野生型マウスと差が見られないことから、NICRの機能に絞った解析が可能である。今後、さらに生理的、および、病態生理学的な観点から計画を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋の実験系の立ち上げや、変異RyR1の基本的な性質について確認するという一連の実験を実行することができた。さらに、筋疾患のモデルマウスの導入にも着手しており、次年度以降の研究に繋がる結果を得ている。おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルの実験では、骨格筋におけるNICRについてカルシウムイメージングなどの技法を用いて詳細に調べていく。同時に、骨格筋の代謝に注目して生化学的解析なども実施する。個体レベルの実験では、筋疾患モデルマウスを用いた骨格筋損傷・回復などについて、組織学的手法に加え、小動物用CTなどの画像解析を導入して多角的に解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費削減に努め、当初の予定より少ない費用で実験を遂行することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生理学・薬理学・生化学実験やイメージングに係る試薬、細胞培養に用いるプラスチック器具などの消耗品、実験動物の購入などに充当する。
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