研究課題/領域番号 |
15K08228
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松島 充代子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10509665)
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研究分担者 |
川部 勤 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20378219)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フラボノイド / Nrf2 / 細胞膜 |
研究実績の概要 |
フラボノイドは天然の機能性成分で、多彩な細胞保護効果を示す。これまでに我々は数種のフラボノイドがストレス応答時に重要な転写因子Nrf2を活性化させ細胞保護に働くことを報告し、フラボノイドは本来ストレス下で誘導される防御機構を予め起動し細胞を警戒状態に導く活性を有すると考えた。また、多彩な細胞保護作用を考えると、フラボノイドは共通した基盤となる作用起点として、細胞が外界と接する細胞膜に根幹となる作用標的がある。既にフラボノイドの作用により局在が変化する細胞膜構成分子caveolin-1を見出している。本研究ではフラボノイドの作用標的として細胞膜のcaveolin-1および結合し共存するNrf2の活性化を指標として、フラボノイドの多彩な細胞保護効果の発現機構における細胞膜の役割について解明する。 平成27年度は代表的なフラボノイドであるケルセチンを用いてcaveolin-1の局在が変化する機序について検討した。はじめにケルセチンが脂質ラフトの形成に与える影響について、細胞表面のGM1の発現および細胞膜分画におけるcaveolin-1の発現を評価した。GM1の発現はケルセチンにより減少し、caveolin-1の発現分布がラフト分画以外にも広がることが分かり、ケルセチンは脂質ラフトを破壊する可能性が示唆された。次にケルセチン刺激により局在が変化するcaveolin-1と共にNrf2がどのように局在を変化させるかを確認するため、Nrf2の過剰発現細胞株を作製し、免疫蛍光染色でcaveolin-1およびNrf2の局在を評価した。caveolin-1-Nrf2はケルセチン処理後に細胞膜から減少し、細胞質および核で増加するように思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では①ケルセチンがcaveolin-1の局在を変化させる機序の検討および②caveolin-1とNrf2の局在および共存に及ぼすケルセチンの影響を検討することを計画していた。①についてはケルセチンがラフトの構造を破壊することを見出すことが出来たが、ラフトの構造変化を引き起こす機序についてはまだ解析途中である。②についてはNrf2過剰発現細胞株の作製ができ、ケルセチンによるcaveolin-1およびNrf2の局在について免疫蛍光染色および免疫沈降法を用いた検討を始めたところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はケルセチンがcaveolin-1の局在を変化させる機序についてショ糖密度勾配遠心法を用いてケルセチンで刺激した細胞から細胞膜分画あるいは脂質ラフト分画を回収し、各分画中の脂質成分の量を測定する。また、caveolin-1-Nrf2複合体とNrf2活性化の関与について詳細に検討する。
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