研究課題
フラボノイドは野菜や果物に含まれる天然の機能性成分であり、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用など多彩な細胞保護作用を発揮することが知られているが、その作用機序については明らかにされていない。これまでに我々はフラボノイドの一種であるケルセチンが転写因子nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2)の活性化を促進し、heme oxygenase (HO)-1の発現を誘導することで細胞保護作用を示すことを明らかにしており、本研究では細胞膜に焦点を当て、フラボノイドが持つNrf2-HO-1系を介した細胞保護作用の作用機序の解明を目的とする。昨年までにケルセチンが細胞膜の構造を変化させることを明らかにし、また、細胞膜の構成タンパク質であるcaveolin-1がNrf2とともにその局在を変化させる可能性を示した。今年度はケルセチンによるcaveolin-1-Nrf2複合体の局在変化について免疫組織化学染色および免疫沈降法を用いて詳細に検討を行った。caveolin-1-Nrf2複合体は定常状態では細胞膜に多く存在し、ケルセチンにより細胞質、核へと局在を変化させることが明らかとなった。以上の結果より、ケルセチンは細胞膜の構造を変化させ、caveolin-1-Nrf2複合体を核へと移行させることでNrf2-HO-1系を活性化させる可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
現在までに細胞膜構成タンパク質のcaveolin-1とNrf2が複合体として細胞膜に局在すること、ケルセチンが細胞膜の構造変化を引き起こし、caveolin-1-Nrf2複合体を細胞質、核へ移行させることを明らかにしている。現在、ケルセチンが細胞膜の構造変化を引き起こす機序について検討を始めたところであり、ケルセチンが細胞膜へ作用し、細胞保護作用を発揮するまでの一連の作用機序を明らかにしたい。
引き続きケルセチンの作用機序について検討を行う。細胞膜への作用を中心に、細胞膜の構造変化によって誘導されるcaveolin-1-Nrf2-HO-1の活性化以外の分子についても探索する。
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Toxicology
巻: 379 ページ: 22-30
10.1016/j.tox.2017.01.014.