フラボノイドは野菜や果物に含まれる成分であり、抗炎症、抗アレルギー、抗酸化作用などさまざまな細胞保護作用を発揮するが詳細な機序については明らかにされていない。本研究ではフラボノイドの作用起点を細胞膜と考え、フラボノイドの作用標的として見出したcaveolin-1に焦点をあて、フラボノイドによる多彩な細胞保護作用発揮の分子機構を解明することを目的とする。 これまでにcaveolin-1は細胞膜に局在し、その一部はNrf2と複合体を形成していることを見出し、フラボノイドのひとつであるケルセチンがcaveolin-1-Nrf2複合体を細胞膜から細胞質、核へと移行させることを明らかにした。今年度はケルセチンがcaveolin-1-Nrf2複合体の局在を変化させる機序について検討した。ケルセチンで処理したNIH-3T3細胞より細胞膜分画を回収し、各種細胞膜構成成分の量の変化について検討したところ、ケルセチンは細胞膜を構成するコレステロールを減少させることを明らかにした。また、コレステロール除去剤であるMβCDはHO-1の発現を誘導したことから、細胞膜内のコレステロール量の減少によりNrf2の活性化が起こる可能性を見出した。 以上の結果より、ケルセチンは細胞膜のコレステロールを減少させることでcaveolin-1-Nrf2複合体を細胞膜から核へと移行させ、Nrf2-HO-1の活性化を導くことで細胞保護作用を発揮する可能性が示唆された。
|