研究課題/領域番号 |
15K08231
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古谷 和春 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40452437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞内シグナル伝達 / 受容体 / カリウムチャネル / G蛋白質シグナル / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、m2ムスカリン性アセチルコリン受容体(m2R)がGαサブユニットのGTPase活性を増強するG蛋白質シグナル調節蛋白質RGS4の働きを促進し、G蛋白質シグナルの活性化に歯止めをかけるような抑制機構をもっていることを見出した。本研究は、この新規G蛋白質シグナル制御機構を解析し、その基礎的理解を得ることを目的としている。 以前の研究により、この制御機構に膜電位依存性が認められていた。初年度である平成27年度は、この膜電位依存性を定量的に理解する実験をおこなった。実験には、この現象を最初に観察した単離ラット心筋細胞、そして分子レベルの詳細な解析には異所性発現系としてアフリカツメガエル卵母細胞を用いた。電気生理学的実験手法の膜電位固定法により膜電位を操作すると、pilocarpine投与により活性化されるGβγ依存的なカリウム電流は膜電位を大きく過分極させると抑制機構がより強く働くことがわかった。またpilocarpineの濃度を濃くすることによっても抑制機構が強くなることが分かった。膜電位変化による抑制の制御は可逆的であり、抑制の増強と緩和はミリ秒から数秒のタイムレンジでダイナミックに起こることが分かった。 pilocarpineはm2Rの部分活性化薬として知られているが、その他のm2R部分活性化薬も同様の制御機構を引き起こすこと、薬物の種類によって抑制の強度に差があることを観察した。 さらに、この機構の電位依存性とm2Rの関係を調べるために、変異m2Rを実験に用いる計画を立てている。初年度はm2R遺伝子に変異を導入し、強制発現させたm2RのカノニカルなG蛋白質シグナル活性化機能に対する変異の影響を解析した。 また、蛍光でラベルしたm2RとRGS4間で蛍光相互相関分光法(FCCS)や共鳴エネルギー移動(FRET)法による相互作用解析が可能か検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度である平成27年度は、pilocarpine投与時のRGS依存的なG蛋白質制御に観察される膜電位依存性の定量的理解を進めることを目指した。計画立案段階で予備的な検討を行っていたため、研究期間開始後すぐに研究を本格化させることができ、本年度計画した研究は順調に実施された。次年度以降、分子機構に迫る様々な解析を実施する計画であるが、その際の評価指標となる電位依存性の基本的特性に関して、信頼できるデータを取得することが出来た。ここまでの成果により、当初の計画通り順調な進展をしていると言える。 また、次年度以降の解析に用いるm2Rの変異体作成も初年度中に行った。acetylcholineやpilocarpineなどのアゴニスト刺激下に、新たに作成した各種変異m2RがそもそもG蛋白質シグナルを活性化するか解析を始めている。さらに、m2RとRGS4の相互作用を評価する生理学的実験手法の開発にも当初の計画を前倒しで着手した。よって、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展しており、対策が必要な大きな問題は発生していない。申請時の計画段階から、実験的に検証可能な仮説を立て、実験により仮説が否定された場合の第二・第三の計画を用意している。平成28年度以降は、RGS依存的なG蛋白質制御におけるm2Rの関与を示す実験を本格化させる。この研究を実施するための実験機器や実験手法は準備は始められている。従って次年度も当初の計画に従って研究を進めることが可能であり、期間内に研究目標を達成出来ると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、RGS依存的なG蛋白質制御の電位依存性の特性の解析に次年度までかかる予定であったが、計画以上にスムーズに実施出来た。また、実験に問題が発生した場合も想定してバックアッププランも計画していたが、本年度の実験を着実に計画通り進めることが出来たため、バックアッププランは実施の必要がなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、本年度からの研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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