研究代表者は、G蛋白質シグナル調節タンパク質(Regulator of G protein signaling 4:以下RGS4)がm2ムスカリン性アセチルコリン受容体(m2R)依存性シグナル伝達を抑制的に制御することを過去に報告している。昨年度までの研究により、Pilocarpineなどm2Rのpartial agonistによってこの受容体を介したシグナル伝達を活性化させたときには、膜電位を過分極させるとRGS4による抑制機構がより強く働くことがわかった。またpilocarpineの濃度を濃くすることによっても抑制機構が強くなることが分かった。 m2RのDRY motifと呼ばれる部位に点変異を導入すると、この変異受容体を介したシグナル伝達では電位依存性が損なわれていた。この領域は受容体のagonist依存的な構造変化に関わることが既に報告されており、変異受容体を介したシグナル伝達の電位依存性の変化は受容体のpilocarpineへの感受性の変化の結果起こっている可能性も考えられた。この可能性を調べるため、変異受容体のpilocarpineに対する応答性を解析し、野生型と差がないことが分かった。 これまで得られた研究結果から、m2Rの電位依存的な構造変化がpartial agonistによって惹起される下流のシグナル伝達の電位依存性に関連していると結論づけ、それらの成果を論文に纏め、査読を受けて改訂を行った後、Scientific Report誌に発表した。
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