研究課題
哺乳類の心筋細胞は、生直後に増殖能を大きく失うことから、心筋細胞の恒常性維持には、心筋保護シグナルが重要であると考えられている。我々はこれまで、IL-6ファミリーサイトカインが心筋細胞死抑制や心筋組織内血管新生を介して心筋保護に寄与していることを報告してきた。特に、IL-6ファミリーサイトカインの心筋保護効果においてシグナル伝達分子STAT3が重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。これまでに、癌細胞において、STAT3の下流でセリン・スレオニンリン酸化酵素であるPim-1キナーゼが細胞保護に重要であることが報告されているが、心筋細胞においてはSTAT3/Pim-1キナーゼシグナルの意義は検討がなされていない。本研究では、心筋細胞におけるSTAT3/Pim-1シグナルの意義を解析し、Pim-1キナーゼの基質を探索し、タンパク質翻訳の制御に関わるeIF4BがPim-1の基質になることを見出した。さらに、Pim-1を過剰発現すると心筋細胞接着が増強されること、データベース上、細胞接着分子であるN-cadherinのmRNAの5'UTRにeIF4B結合モチーフが存在すること、Pim-1を過剰発現させるとN-cadherinタンパク質の発現を上昇させることを確認した。最後に、Pim-1による心筋細胞保護にeIF4B/N-cadherin系が重要であるかどうか検討し、抑制型N-cadherinの存在下では、Pim-1は細胞保護作用を示さないことを明らかにした。以上の結果は、IL-6ファミリーサイトカインの新たな心筋保護作用メカニズムとして、細胞間接着構造の制御が重要であることを提唱するものである。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
PLoS One.
巻: 12 ページ: e0189948
doi: 10.1371/journal.pone.0189948. eCollection 2017.
巻: 12 ページ: e0183584
doi: 10.1371/journal.pone.0183584. eCollection 2017.
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 1407
doi: 10.1038/s41598-017-01426-8.