研究課題
ラット脳初代培養ミクログリアはトル様受容体(TLR)4リガンドであるリポポリサッカライド(LPS)で刺激すると速やかに細胞死を起こすが、その中に細胞死を免れ長期に渡り生存維持する細胞集団が存在する。これらの生存細胞は、活発に死細胞を貪食し、傷害的因子の産生も低いことから、細胞死を起こす細胞群とは異なる性質を持つ可能性がある。一般的に、ミクログリアのTLR4活性化は炎症を引き起こし神経傷害的であると考えられているが、これらの生存ミクログリアは共培養により初代培養ニューロンの細胞死を抑制したことから神経保護作用を発揮することを明らかにした。さらに、保護作用発揮のメカニズムとして、TLR4活性化により誘導されるアクチビンAとVEGFに注目した。これらの遺伝子発現は、細胞外ヌクレオチドにより著しく促進され、その機序として、TLR4活性化に伴い発現亢進されるP2Y2受容体が重要な役割を果たすことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
TLR4活性化により長期生存するミクログリアによる神経細胞保護作用を明らかにした。また、その機序として、TLR4活性化により産生誘導される神経保護因子の関与が考えられるが、それらの候補としてアクチビンAとVEGFの可能性を示した。さらに、TLR4活性化生存ミクログリアに特異的に発現誘導されるP2Y2受容体が、アクチビンAとVEGFの発現を著明に上昇制御することも明らかにできた。これらのことから研究はおおむね順調に進展していると考えている。
ミクログリアの神経保護作用におけるP2Y2受容体およびアクチビンAとVEGFの役割をさらに詳細に検討する。また、ミクログリアの保護シフトを担うアストロサイトの役割についても解析を進める。
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