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2016 年度 実施状況報告書

ミクログリアの神経保護シフトの分子基盤と神経疾患治療への活用

研究課題

研究課題/領域番号 15K08234
研究機関広島大学

研究代表者

秀 和泉  広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 助教 (20253073)

研究分担者 酒井 規雄  広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70263407)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードミクログリア / トル様受容体4 / 死細胞貪食 / P2Y2受容体 / TAM受容体
研究実績の概要

ラット脳初代培養ミクログリアをトル様受容体(TLR)4リガンドであるリポポリサッカライド(LPS)で刺激すると、速やかに細胞死を起こす細胞と長期に生存する細胞が出現する。これまでに、この長期生存ミクログリアは神経保護作用を発揮し、その作用にはアクチビン-AやVEGFなどの保護因子の産生が関与する可能性を明らかにしてきた。また、これらのミクログリアは隣接する死細胞を活発に貪食し、この死細胞貪食によっても保護的性質を獲得すると推測される。今回、位相差顕微鏡を用いたタイムラプス観察を行い、刺激によるミクログリアの細胞死誘導とその死細胞貪食をリアルタイムに可視化し、個々の細胞の反応を追跡することにより貪食ミクログリアの定量化を行った。P2Y2受容体選択的拮抗薬であるAR-C118925XXはミクログリアの死細胞に対する認識や接触には影響を及ぼすことなく、死細胞の貪食(取込み)を抑制した。P2Y2受容体に親和性をもつ非選択的P2拮抗薬スラミンも同様の抑制作用を示し、一方、P2Y2受容体に親和性のない非選択的P2拮抗薬PPADSは死細胞貪食には無影響であった。これらのことから、死細胞貪食におけるP2Y2受容体の重要性が確認された。これまでに、LPS刺激によりミクログリアのP2Y2受容体は著明に発現亢進することを明らかにしており、炎症時に発現誘導されるP2Y2受容体が死細胞の貪食除去のシステム構築において極めて重要な役割を果たすことが示唆された。そのメカニズムの一つとして、死細胞が表出するホスファチジルセリンを目印として貪食を仲介するTAM受容体の発現をP2Y2受容体が制御する可能性を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、TLR4活性化により長期生存するミクログリアは神経保護作用を発揮すること、その作用機序には少なくともアクチビン-AとVEGFの産生が関与する可能性を示してきた。このうちアクチビン-AはP2Y2受容体の活性化を介して誘導される。今回さらに、もう一つのミクログリアの重要な機能である死細胞貪食においてもP2Y2受容体が重要な役割を果たすことを明らかにした。このように炎症時に保護的に働くミクログリアの機能においてP2Y2受容体が鍵となるメカニズムについて新しい知見を得ることができたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

TLR4活性化により発現亢進するP2Y2受容体がミクログリアの神経保護機能の発揮や死細胞貪食をどのように制御するのかを分子レベルで明らかにしていく。さらに、アストロサイトとの相互作用についても解析を進めていく。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The Toll-like receptor 4-activated neuroprotective microglia subpopulation survives via granulocyte macrophage colony-stimulating factor and JAK2/STAT5 signaling.2016

    • 著者名/発表者名
      Kamigaki, M., Hide, I., Yanase, Y., Shiraki, H., Harada, K., Tanaka, Y., Seki, T., Shirafuji, T., Tanaka, S., Hide, M., and Sakai. N.
    • 雑誌名

      Neurochem. Int.

      巻: 93 ページ: 82-94

    • DOI

      doi.org/10.1016/j.neuint.2016.01.003

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The subcellular dynamics of the Gs-linked receptor GPR3 contribute to the local activation of PKA in cerebellar granular neurons.2016

    • 著者名/発表者名
      Miyagi, T., Tanaka, S., Hide, I., Shirafuji, T., Sakai, N.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11 ページ: e0147466

    • DOI

      doi.org/10.1371/journal.pone.0147466

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The development of screening methods to identify drugs to limit ER stress using wild-type and mutant serotonin transporter.2016

    • 著者名/発表者名
      Katarao, K., Murakawa, S., Asano, M., Usuki, N., Yamamoto, H., Shirafuji, T., Tanaka, S., Hide, I. and Sakai, N.
    • 雑誌名

      Acta Histochem. Cytochem.

      巻: 49 ページ: 197-206

    • DOI

      doi.org/10.1267/ahc.16029

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ミクログリアのTLR4活性化を介した死細胞貪食におけるP2Y2受容体の役割2017

    • 著者名/発表者名
      秀 和泉 白榊紘子 神垣真由美 柳瀬雄輝 白藤俊彦 田中 茂 秀 道広 酒井規雄
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎市)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] PKCγによるCSPαリン酸化の神経細胞生存における役割2017

    • 著者名/発表者名
      白藤俊彦 上山健彦 吉野健一 足立直子 秀 和泉 田中 茂 齋藤尚亮 酒井規雄
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎市)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] セロトニントランスポータ(SERT)の膜輸送を促進する薬物の検索 -抗潰瘍薬のSERT機能調節への効果―2017

    • 著者名/発表者名
      村川青矢 浅野昌也 荊尾一草 秀 和泉 白藤俊彦 田中 茂 酒井規雄
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎市)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] 海馬神経細胞におけるGPR3の神経極性形成に与える影響2017

    • 著者名/発表者名
      嶋田直人 田中 茂 宮城達博 秀 和泉 白藤俊彦 酒井規雄
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎市
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] 海馬神経細胞におけるGPR3の神経極性に与える影響2016

    • 著者名/発表者名
      嶋田直人 田中 茂 秀 和泉 白藤俊彦 酒井規雄
    • 学会等名
      第130回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      京都大学百周年時計台記念館(京都市)
    • 年月日
      2016-11-19
  • [学会発表] セロトニントランスポーターの膜輸送促進活性を持つ薬物の検索 -抗潰瘍薬カルベノキソロンのケミカルシャペロンとしての効果―2016

    • 著者名/発表者名
      村川青矢 浅野昌也 荊尾一草 秀 和泉 白藤俊彦 田中 茂 酒井規雄
    • 学会等名
      第130回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      京都大学百周年時計台記念館(京都市)
    • 年月日
      2016-11-19
  • [学会発表] Analysis of PKCγ substrates in the nigro-striatum system: The role of CSPα phosphorylation in the neuronal survival2016

    • 著者名/発表者名
      T. SHIRAFUJI, T. UEYAMA, K.-I. YOSHINO, N. ADACHI, S. TANAKA, I. HIDE, N. SAITO, N. SAKAI
    • 学会等名
      Neuroscience Meeting
    • 発表場所
      San Diego, USA
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-16
    • 国際学会
  • [学会発表] Potential role of G-protein coupled receptor 3 in regulating cytokine gene expression in the T lymphocytes2016

    • 著者名/発表者名
      S. TANAKA, K. HIRANO, T. KAMEOKA, T. MIYAGI, Y. YANASE, I. HIDE, T. SHIRAFUJI, N. SAKAI
    • 学会等名
      Neuroscience Meeting
    • 発表場所
      San Diego, USA
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-16
    • 国際学会
  • [学会発表] Toll-like receptor 4 活性化ミクログリアはP2Y2受容体を介して血管内皮細胞増殖因子(VEGF)およびアクチビンAの発現誘導を亢進させる2016

    • 著者名/発表者名
      白榊紘子 秀 和泉 神垣真由美 柳瀬雄輝 白藤俊彦 田中 茂 秀 道広 酒井規雄
    • 学会等名
      第59回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 年月日
      2016-09-08 – 2016-09-10
  • [学会発表] セロトニントランスポーターを用いた膜輸送促進活性を持つ薬物検索の試み2016

    • 著者名/発表者名
      酒井規雄、村川青矢、浅野昌也、荊尾一草、秀 和泉、白藤俊彦、田中 茂
    • 学会等名
      第20回活性アミンに関するワークショップ
    • 発表場所
      ホテルマークワンつくば研究学園(つくば市)
    • 年月日
      2016-08-20
  • [学会発表] Toll様受容体4活性化ミクログリアのサブポピュレーションはGM-CSF自己分泌を介して長期生存し神経保護効果を示す2016

    • 著者名/発表者名
      神垣真由美 秀 和泉 白榊紘子 柳瀬雄輝 田中 茂 白藤俊彦 秀 道広 赤木宏行 酒井規雄
    • 学会等名
      第129回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      広島県医師会館(広島市)
    • 年月日
      2016-06-24
  • [学会発表] 黒質線条体系におけるPKCγの基質の解析:Cysteine string protein αリン酸化の細胞生存に対する役割2016

    • 著者名/発表者名
      白藤俊彦 上山健彦 吉野健一 足立直子 秀 和泉 田中 茂 齋藤尚亮 酒井規雄
    • 学会等名
      第129回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      広島県医師会館(広島市)
    • 年月日
      2016-06-24
  • [学会発表] セロトニントランスポーター変異体を用いた膜輸送促進活性を持つ薬物検索の試み2016

    • 著者名/発表者名
      酒井規雄 村川青矢 浅野昌也 荊尾一草 秀 和泉 白藤俊彦 田中 茂
    • 学会等名
      第129回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      広島県医師会館(広島市)
    • 年月日
      2016-06-24
  • [学会発表] 小脳顆粒神経細胞におけるGPR3を介した神経突起伸長メカニズムの解明2016

    • 著者名/発表者名
      田中 茂 嶋田直人 秀 和泉 白藤俊彦 酒井規雄
    • 学会等名
      第129回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      広島県医師会館(広島市)
    • 年月日
      2016-06-24
  • [学会発表] PKCgamma knockout Parkinson syndrome model: The role of PKCgamma for Parkinsonian symptoms2016

    • 著者名/発表者名
      白藤俊彦 上山健彦 吉野健一 足立直子 秀 和泉 田中 茂 齋藤尚亮 酒井規雄
    • 学会等名
      第57回 日本神経学会学術大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(神戸市)
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21
  • [備考] 広島大学大学院医歯薬保建学研究院神経薬理学研究室

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/yakuri/

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公開日: 2018-01-16  

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