研究課題/領域番号 |
15K08235
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
本田 健 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30457311)
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研究分担者 |
乾 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70223237)
酒井 大樹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40464367)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸アプタマー / 心筋細胞 / 細胞内導入 |
研究実績の概要 |
心疾患において、創薬標的が心筋細胞内に多く見出されていることや、遺伝子治療薬が細胞内導入を必須とすることなど、心臓特異的な薬物細胞内送達技術が強く求められている。本研究は、その薬物送達ツールとして機能する核酸アプタマーの開発を目的としている。 H27年度は、40塩基長のランダム配列を持つ100塩基長の一本鎖DNA(ランダム領域の両側にはPCR増幅のためのプライマー配列を持つ)のライブラリーから、心筋細胞内に取り込まれるDNAのみを抽出、増幅するといった新たな人工分子進化法の構築に成功し、30種ほどのDNAクローンを目的アプタマー候補として獲得した。次に、細胞内侵入量を評価するため、リアルタイムPCRによる測定を試みたが、配列に依存してPCR増幅効率が異なり、正確な評価に時間がかかるため、放射ラベルしたDNAクローンを合成し、細胞内侵入量を直接的に測定する手法を立ち上げた。まず全てのクローンについて心筋細胞侵入活性を調べ、その後心筋細胞への特異性を評価するため、心筋以外の様々な細胞への侵入活性も測定し、心筋への侵入効率および特異性が高いクローンを選出した。さらに、活性に必要な最小限のDNA鎖長を探索した。まずプライマー領域の欠損体を合成し、活性への影響を確認したが、意外にもプライマー部分またはその一部が活性に重要であるものが多かった。そこでDNA鎖長の両側から10塩基ずつ削除した欠損体を合成して、活性に必要な領域を精査していったところ、最小のもので58塩基長まで削除することが可能なクローンを見出した。当初の予定では、血中安定性が低い場合、心筋侵入活性に影響しない程度に分解耐性化学修飾を加える予定であったが、いずれのDNAクローンもヒト血中において数時間は安定であることが判明した。今後の解析には十分な安定性を持つと判断したため、特別な修飾は実施しない方向で以降の研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋細胞を用いた分子進化法による心筋侵入アプタマーの獲得という、細胞内侵入機能を指標とした新たなスクリーニング法の構築に成功し、実際に目的の活性を持つものが得られ、さらにはキャラクタライズも予定通り進んでいる。計画ではvivoでの解析も予定していたが、アプタマー候補数が当初の予定よりも多く獲得されたため、全てをvivo解析するのは資金的に難しいため、予定を変更して、薬物送達能力などのさらなる詳細な解析を先行させ、より最適なアプタマーを絞り込んでからvivo解析に移行することとする。
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今後の研究の推進方策 |
得られた心筋特異的透過アプタマーを用いて、心筋細胞内への送達能力を解析する。検討する分子として、まずは低分子化合物を検討する。その評価法としては、低分子化合物(ベンゾフェノン)を共有結合させたアプタマーを放射ラベルして、細胞への取込みを放射活性の直接測定により解析する。また、核酸医薬の送達を見据えて、核酸を搭載したアプタマーも同様に調べる。これには、合成アプタマーの3’側に20~100塩基長を伸長反応で付加したアプタマーを用いる。ここで用いる低分子および鎖長延長体は、後々のアプタマー標的探索時に、相手分子へのトラップに必要なアプタマーの化学修飾を想定したものでもある。
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次年度使用額が生じた理由 |
アプタマーの電気泳動解析時のゲル作製に用いる塩類をH27年度中に購入予定であったが、使用量が当初の予定より少なく、現在手持ちの量で半年ほどは解析が可能なため、購入を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額に相当する助成金は、H28年度の中盤あたりにおいて、アプタマーの電気泳動解析時のゲル作製に用いる塩類の購入に充てる予定である。
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