研究課題/領域番号 |
15K08239
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
岩田 和実 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305571)
|
研究分担者 |
松本 みさき 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80533926)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心線維化 / 活性酸素種 / ゲノム編集 / 遺伝子組換えマウス / 心線維芽細胞 / 心筋細胞 |
研究実績の概要 |
本申請の目的はCRISPR/Casによるゲノム編集を用い新たに遺伝子組換えマウスを作製し、心線維化おける活性酸素産生酵素NOX1/NADPH オキシダーゼの役割を解明することである。申請者は最近アントラサイクリン系抗腫瘍薬のドキソルビシン投与による心線維化がNOX1の遺伝子欠損マウスで抑制されるという実験結果を得た。平成28年度は、平成27年度に引き続き細胞特異的NOX1欠失が可能なNOX1と黄色蛍光蛋白(venus)の共発現マウスを作製しNOX1の局在および心線維化に関わる分子機序を明らかにすることを目的とした。sgRNA,Cas9 発現ベクターおよびターゲティングベクターをマウス線維芽細胞株(NIH-3T3)に遺伝子導入することにより、相同組み換えによるターゲティングベクターの遺伝子導入に成功した。現在はin vitro transcriptionにより作製したsgRNAおよびCas9、およびターゲティングベクターの受精卵への導入を実施している。受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し産仔を得る予定である。また心筋培養細胞株(H9c2)を用いた検討では、心筋死細胞由来物質がTLR4受容体を介し心筋細胞におけるNox1遺伝子の発現を上昇させることを、さらにH9c2死細胞由来物質は心線維芽細胞(CF)の増殖を誘導することを見出した。一方、ゲノム編集によりNOX1を欠損したH9c2の死細胞由来物質ではCF増殖の誘導が有意に抑制された。野生型およびNOX1欠損マウス由来CFでは増殖能に差違は認められなかった。以上から死細胞由来物質により心筋細胞で発現誘導されたNOX1が、CF増殖因子の量もしくは活性を調節していると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り組織特異的NOX1欠失が可能なNOX1と黄色蛍光蛋白(venus)の共発現マウスを作製の作製に着手しており、培養細胞株を用いた予備検討ではCRISPR/Casによるゲノム編集を用い相同組み換えによる目的遺伝子の導入に成功している。既に受精卵を用い実験を行っている。当該年度では作製したマウスを用いてNox1の発現局在を予定していたため、新たな遺伝子改変マウスの作製は予定より若干遅れていると考えられるが、予定していた心筋細胞培養株を用いた心筋障害におけるNox1遺伝子の発現誘導機構の解明が予定より早く達成できていること、心筋細胞におけるNOX1がCF増殖因子の量もしくは活性を調節していることを新たに見出していること、またマウスの横行大動脈縮窄術およびストレプトゾトシンによる高血糖による心線維化モデルの作製についても検討を行ったことから、概ね予定通りの進捗状況であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り遺伝子組組換えマウスの作製を行う。受精卵へのマイクロインジェクションによる遺伝子導入は専門的な手技習得が不可欠であるが、受精卵の相同組み換え効率は低いため多数の受精卵への注入が必要となると考えられる。近年、簡便かつ大量の受精卵への遺伝子導入がエレクトロポレーション法にて可能となってきている。必要であれば、遺伝子導入を新たに開発されたエレクトロポレーション法で行う。 マウスが得られた後,心線維化モデルを作製しin vivo におけるNox1の発現局在を同定する。発現が認められた組織特異的にNox1遺伝子を欠損させ心線維化におけるNox1の役割を明らかにする。また培養細胞系で心筋細胞におけるNOX1がCF増殖因子の量もしくは活性を調節していることを新たに見出しており,今後は心筋細胞由来CF増殖因子の同定に着手する.
|