研究課題
心筋のCa2+遊離チャネルである2型リアノジン受容体(RyR2)の変異は、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍、特発性心室細動、QT延長症候群からの不整脈など、様々なタイプの致死性不整脈や突然死を引き起こすことが知られているが、その発症機序や治療方法はまだ確立されていない。本研究計画では、RyR2の様々な変異がどのような性質を持ち、どのような機序で種々の疾患を引き起こすのか調べ、またそれらの治療薬法の基盤を作る事を目的とした。平成27年から29年度にかけては、様々な疾患変異について、HEK細胞発現系を用いた疾患変異の機能評価と、培養心筋細胞セルラインを用いた不整脈発生メカニズムの検討を行った。変異RyR2安定発現HEK細胞系では、細胞質および小胞体のCa2+モニタリング、[3H]リアノジン結合によりRyR2活性を定量的に評価した。その結果、催不整脈性変異にはCa2+遊離活性が亢進するgain-of-function (GOF) 型と活性が著しく低下するloss-of-function (LOF) 型がある事を見出した。GOF型では活性の亢進の程度と疾患の重症度に良い相関がみられた。一方、WT RyR2を恒常発現する培養心筋細胞に変異RyR2を発現させ、LOF型の不整脈発生機序について検討したところ、LOF変異は、さらに二つの型に分けられることが分かった。平成29年から30年度にかけては、上述の過程で見出した小胞体Ca2+モニタリングを利用したRyR2作用薬の大規模スクリーニング系を構築し、数種類の新規RyR2阻害薬を見出した。それらのいくつかは心不全モデルマウスやRyR2変異マウス心筋で見られるCa2+ sparkやCa2+ wave等の不整脈の前兆現象を抑え、摘出心筋の異所性自動能も抑制した。RyR2阻害薬の抗不整脈薬としての応用可能性が示唆された。
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Mol Pharmacol
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