研究課題/領域番号 |
15K08245
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
名和 幹朗 東京医科大学, 医学部, 助教 (10398620)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / BTBD10 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は進行性に上位・下位運動神経細胞が変性脱落する難病である。これまでにALS関連神経細胞死を引き起こす経路が複数同定されているが、我々は2005年にALS関連細胞死がRac1/PI3K/Akt3経路を介して抑制可能であることを見いだした。更に、この経路においてAkt結合タンパク質であるBTBD10が、Akt脱リン酸化抑制によるAkt活性増強を介して神経細胞死抑制に働くことを明らかとした。また我々は、BTBD10の脊髄運動神経細胞における発現量が孤発性ALS患者では非ALSコントロールと比較して減少していること並びに、培養運動神経細胞や線虫でBTBD10の発現量を低下させることにより細胞死が誘導されることも見いだした。そこで本研究では、BTBD10とALS病態との関連性に関する基礎研究をマウスを用いて行い、BTBD10発現量とALS症状発症・進行との関連性を検討した。 平成27年度は、BTBD10ノックアウト(BTBD10-KO)マウスの作製並びに、BTBD10トランスジェニック(Tg)マウスとALSモデルマウスの交配を行なった。BTBD10(flox/+)マウスとCreリコンビナーゼを全身性に発現するトランスジェニックマウスと交配し、目的エクソンの欠失に成功したが、目的エクソンのみを含まず、残り全てのエクソンを含むような転写産物が産生されており、完全なノックアウトマウスでないことが判明した。 BTBD10-Tgマウスは2種類のALSモデルマウス(A315T-TDP-43-Tgマウス並びにG93A-SOD1-Tgマウス)と交配し、産仔を得た。しかし、当施設では、出産後の育児放棄や、食殺によりALSモデルマウスの系統維持が難しく、継続的にBTBD10-Tgマウスと交配が可能な個体数を確保出来ない状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度は、BTBD10(flox/+)マウスのC57BL/6Jへの戻し交配終了後、全身性にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスと交配し、目的エクソンの欠失に成功した。次に、BTBD10-KOマウスにおいてタンパク質レベルでBTBD10の発現が消失しているか確認した結果、欠失エクソンがコードするタンパク質部位のみが欠けいると思われる大きさで、抗BTBD10抗体で免疫沈降可能なタンパク質が発現していることが判明した。さらに、BTBD10-KOマウスの大脳から抽出したRNAとBTBD10遺伝子に対するプライマーを用いてRT-PCRを行い、ノックアウトマウス特異的に増幅されるバンドをクローニングし、塩基配列を解析した結果、目的エクソンの前後のエクソンにノックアウトES細胞を作製する際に利用するneoカセットの一部が偽エクソンとしてアミノ酸のフレームシフトを起こさない状態で挟まれていたため、当初予定していたCreリコンビナーゼによる目的エクソンの除去のみならず、neoカセットの除去も必要であることが考えれる。 当施設におけるニ種類のALSモデルマウス(A315T-TDP-43-Tgマウス並びにG93A-SOD1-Tgマウス)の系統維持が、原因不明の出産後育児放棄や、食殺により困難であり、系統維持をするのが限界であり、BTBD10-Tgマウスとの交配が可能な個体数を確保出来ない状況であるため、交配計画の改善並びに飼育方法の改善を試みる必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたCreリコンビナーゼトランスジェニックマウスとBTBD10(flox/flox)マウスとの交配により、目的エクソンを除去する方法ではBTBD10の完全なノックアウトは不可能であることが明らかとなったため、neoカセットを除去するべく、FLPリコンビナーゼ発現マウスを新たに購入し、現在BTBD10(flox/flox)マウスと交配中である。平成28年度はneoカセット除去後、Creリコンビナーゼ-Tgマウスと交配し目的エクソンの除去を行い、BTBD10タンパク質が発現していない事を確認し、完全なノックアウトマウスの作製が終了し次第、その表現型を観察する。 現在ALSモデルマウスの系統維持が難しく、BTBD10-Tgマウスとの交配が可能な個体数を確保出来ない状況である。そこで、系統維持と並行してALSモデルマウスとBTBD10-Tgマウスの交配を体外受精により行い、表現型解析に使用するマウスを作製する予定である。また、同様の方法で、BTBD10-KOマウスとALSモデルマウスを交配し、表現型を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はほぼ予定通り予算を使用したが、マウスの飼育数が当初の予定より僅かに少なかったため14917円余る結果となったと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は14917円を合わせた請求額の範囲に支出が収まる様に計画通り使用する予定である。
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