研究課題/領域番号 |
15K08246
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
安東 賢太郎 東邦大学, 医学部, 講師 (90466904)
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研究分担者 |
杉山 篤 東邦大学, 医学部, 教授 (60242632)
中瀬古 寛子 東邦大学, 医学部, 助教 (80408773)
中村 裕二 東邦大学, 医学部, 助教 (10614894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラパチニブ / ハロセン麻酔犬 / がん分子標的薬 / 心臓毒性 / 左室拡張不全 / QT間隔延長 / ミトコンドリア機能 / 慢性房室ブロック犬モデル |
研究実績の概要 |
がん分子標的薬の臨床使用において上皮成長因子受容体(EGFR)阻害標的薬は心循環器毒性の発現頻度が高い。しかしながら、毒性発現機序は解明されておらず、開発段階における非臨床試験で心循環器毒性発現性の検討はほとんど行われていない。そこで、本研究ではEGFR阻害分子標的薬ラパチニブを例に心循環器毒性の非臨床試験におけるin vivo評価方法の確立をめざした。 我々はハロセン麻酔犬モデルにラパチニブを投与して、血圧、左室内圧、心拍出量、末梢血管抵抗、心臓電気生理学的指標および心臓超音波学的指標を評価した。1回の臨床投与量に匹敵する0.03 mg/kg およびその10倍量の0.3 mg/kgを10分間かけて経静脈投与したところ末梢血管抵抗の増加、QT間隔延長、有効不応期および等容性拡張時間の延長作用が認められた。この結果はラパチニブの臨床使用で報告されたQT間隔延長と左室機能障害を再現したものと考えられた。 生体にとって危険な催不整脈作用を有する化合物は慢性房室ブロック犬モデルで心臓電気生理学的な不安定性を示すことがわかっている。そこで、ラパチニブの催不整脈性を投与2時間前から投与後21時間まで連続的にホルター心電図を用いて同モデルにおいて評価した。その結果、QT間隔延長作用を示すラパチニブ 0.3 mg/kgを10分間かけて経静脈投与しても催不整脈性は認められず、心臓電気生理学的には安全な医薬品であることが示唆された。 さらに、ラパチニブが心筋細胞毒性を有するかを明らかにするために平成29年度の予定を前倒ししてヒトiPS細胞誘導心筋細胞を用いて、ミトコンドリア機能に対する検討を行なった。ミトコンドリア機能に対する影響については現在、実験結果を解析中である。 ハロセン麻酔および慢性房室ブロック犬モデルを組み合わせるとラパチニブの循環器毒性を非臨床試験で評価できる可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度内に終了しなかったハロセン麻酔犬モデルおける評価および本年度に実施予定であった完全房室ブロック犬モデルを用いた評価はいずれも本年度内に終了した。また、平成29年度に実施予定だったラット心筋細胞におけるミトコンドリア呼吸能に対する検討をヒトiPS細胞誘導心筋細胞に変更して、年度を繰り上げて実施することができた。一方で、ハロセン麻酔犬モデルにおける血中心筋トロポニンI濃度およびヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)の測定および完全房室ブロック犬モデルにおける詳細な心電図評価が未実施である。
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今後の研究の推進方策 |
ハロセン麻酔犬モデルにおける血中心筋トロポニンI濃度およびヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)の測定を行なう。完全房室ブロック犬モデルにおける詳細な心電図評価およびミトコンドリア呼吸能に対する検討結果の解析を進める。予定した全ての実験を終了したのでこれらの統合的な考察を行い、論文投稿を行なう。さらに、国際安全性薬理学会およびその関連学会でも研究結果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物飼育者の費用を平成28年度にまとめて支払った一方で、実験動物の血液生化学的パラメータの測定が未了であることから予算額との差異が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
動物の血液を用いて各種生化学的パラメータ等の測定費用および終了した実験のフォローアップ実施費用に使用する。また、学会発表のための参加費および論文投稿時の校正費用および投稿費用に使用する。
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