研究課題/領域番号 |
15K08247
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
田中 光 東邦大学, 薬学部, 教授 (40236617)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺静脈心筋 / 自動能 / 活動電位 / カリウム電流 / 細胞内カルシウム / ナトリウム・カルシウム交換機構 / アドレナリン受容体 / 心房細動 |
研究実績の概要 |
モルモット摘出肺静脈心筋の自動能を顕在化させる要因について主にガラス微小電極法を用いてカリウムチャネルとアドレナリン受容体の観点から検討した。アセチルコリン感受性カリウム電流遮断薬tertiapinにより、静止膜電位の脱分極方向への移動と緩徐脱分極がみられ、電気的自発活動が誘発された。この減少は心房筋ではみられなかった。また、この自発活動はcarbacholまたは細胞内カルシウムイオン動態を減弱させるryanodineやBAPTAにより減弱した。E4031、chromanol293B、glibenclamideは自発活動を誘発しなかった。単離肺静脈心筋細胞において、carbacholは電気的自発活動に伴うカルシウムトランジェントを消失させるとともに、活動電位を発生していない細胞においても、細胞内カルシウムイオン濃度を低下させた。これらの結果から、肺静脈心筋細胞においては内向き整流性電流が低密度であることが自発活動を許容しており、その過程に細胞内カルシウムイオン動態が関与していることが明らかになった。アドレナリンα受容体刺激により電気的自発活動の誘発が見られた。アドレナリンβ受容体刺激は単独では自発活動を誘発しなかったが、α受容体刺激下の自発活動の発火頻度を著明に増大させた。α受容体刺激は最大拡張期電位の脱分極と、緩徐脱分極の傾きの増大を起こした。β受容体刺激は後期再分極速度の増大と、最大拡張期電位の過分極を引き起こした。両受容体を刺激するnoradrenalineでは、緩徐脱分極相の傾きの著明な増大が見られたが、BAPTA存在下ではその作用が消失した。また、持続性ナトリウム電流遮断によっても抑制効果がみられた。アドレナリンα受容体とβ受容体の刺激は、異なるイオン機序を介して自発活動を促進し、それらは細胞内カルシウムイオンを介した機序により共働的に働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内カルシウム誘発性自動能が顕在化するにはアセチルコリン感受性カリウム電流などの内向き整流性電流密度が小さいことが必要であることが判明し、昨年度見出された伸展刺激による自動能誘発との関連性が示唆された。さらに、交感神経伝達物質noradrenalineがαβ両受容体を介して細胞内カルシウム動態を増強し、自発活動を誘発することが明らかに成り、本研究の中心的な目標である“自動能顕在化機序の解明”がおおむね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
アドレナリンα受容体、β受容体および組織の伸展などの要因により、肺静脈心筋細胞で起きる自動能誘発と関連する現象の詳細を明らかにする。この目的のために主に単離肺静脈心筋細胞を用い、薬理学的手法に加えて膜電位固定法による電流測定、蛍光イメージング法等を用いて詳細に検討する。
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