研究課題/領域番号 |
15K08252
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
大喜多 守 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授(移行) (60449824)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性差 / エンドセリン |
研究実績の概要 |
エンドセリン(ET)受容体拮抗薬の一つである選択的ETA受容体拮抗薬は雄性ラットの腎虚血再灌流処置後の腎機能低下及び腎組織障害を改善するが、雌性ラットでは同薬による病態改善効果は認められない。しかしながら卵巣摘除を施した雌性ラットにおいては、腎虚血再灌流処置後の機能と組織の障害は選択的ETA受容体拮抗薬により有意に抑制される。このことから、雌性ラットの虚血性急性腎障害においては女性ホルモンの有無によって選択的ETA受容体拮抗薬の効果に明らかな差が認められ、本病態の雌雄差にET-1/ETA受容体システムが密接に関わることが示唆された。一方、平成28年度は虚血性急性腎障害における性差発現とETB受容体との関連性をETB受容体遺伝子欠損ラットを用いて評価した。その結果、雄性及び雌性ラットともに虚血再灌流処置1日後の腎機能は野生型と比較してETB受容体遺伝子欠損ラットでより悪化傾向を示した。また1週間後においては、野生型が腎機能の回復を示すのに対し、ETB受容体遺伝子欠損ラットにおいてはその回復過程に遅れがみられた。さらに雌性ラットにおいては、ETB受容体遺伝子欠損ラットの生存率は野生型と比較し有意に低値を示した。今後は、虚血性急性腎障害におけるETB受容体と性差発現との関連性についてさらに詳細に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は虚血性急性腎障害の発症・進展時における性差発現をエンドセリン、特にETB受容体との観点から検討した。また、この雌雄差が生じるメカニズムには内因性の女性ホルモンとエンドセリン受容体(ETA及びETB受容体)が密接に関与している可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
先述したとおり、選択的ETA受容体拮抗薬を用いた検討から、雄性ラットあるいは卵巣摘除した雌性ラットでは虚血性急性腎障害の発症・進展にETシステムが密接に関わっていると考えられる。一方、intactな雌性ラットの本病態発症にはETシステムとは異なるメカニズムが関与している可能性が示唆された。一方我々のこれまでの検討から、虚血性急性腎障害にETB受容体が重要な役割を果たしていることを認めているため、平成28年度はETB受容体と性差発現との関連性をETB受容体遺伝子欠損ラットを用いて検討を加えた。今後は急性あるいは慢性的なETB受容体刺激が虚血性急性腎障害の発症・進展とその性差発現に如何なる影響を及ぼすかについても検討する予定である。
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