研究実績の概要 |
これまでに、尿酸はドパミン神経保護作用を有する可能性を、6-OHDA片側注入パーキンソン病(PD)+高尿酸血症(HU)モデルマウスを用いて示した。また、この神経保護作用には、自身の抗酸化作用とともにグルタチオン合成系の活性化が関与している可能性を示唆する結果を得た。 最終年度は、6-OHDA投与後初期における、これらの神経保護関連因子の経日的な変化を調べた。結果としては、初期(1~2週間)における、グルタチオン合成系に対する作用は認められなかった。また当初計画していたGSK-3bの変化も検出できなかった。さらに神経細胞脱落におけるアポトーシス経路への影響を調べたところ、Caspase3,Bcl2,Baxに対する影響は認められなかった。以上、PD病態初期に尿酸により影響を受ける因子を見出すことはできなかった。 本研究では、尿酸が、モデルマウスのPD様行動(アポモルフィン誘発回転運動、ロータロッドテスト)を改善し、また線条体領域のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性細胞および発現量の減少を抑制することを示した。また、黒質領域においてもTH陽性細胞 死の保護作用を確認することができた。これらの成果は、BehaviouralPharmacology誌に受理された。 現在、海外にて、PD病態進展に対するイノシンを用いた血中および脳脊髄液中の尿酸濃度上昇の影響について、第3相臨床試験が実施中である。本研究成果は、この臨床試験や既に多く報告されている臨床疫学調査の結果を支持する基礎実験情報として、有用であると考えられる。
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