研究課題
LRBAはBEACH(Beige and Chediak-Higashi)ファミリーに属する約320kDaの巨大タンパク質で、過去にLPS誘導性や免疫細胞での発現が報告されたことから、新規の免疫因子と想定される。2012年には、LRBAがB細胞機能異常を伴う免疫不全症の一つであるCVID(分類不能型免疫不全症)の原因遺伝子としても報告されたことから、疾患発症機序の解明、並びにLRBAの生理機能の解明が急務となっている。しかしながら、その本質的な生理機能は全く分かっていない。申請者はこれまで、LRBAを新規LUBAC結合因子として同定し、複数の細胞シグナルと関連することを見出してきた。これを受け本研究では、特に疾患発症・進展との密接な関連が想定されるNF-κB経路、細胞死、B細胞分化の3経路に着目し、LRBAとの分子連関・動的制御の分子機構解明を進めることを計画した。具体的な実施項目としては、(i) LRBAによるNF-κB制御の分子機構解析、(ii) LRBAによる細胞死制御の分子機構解析、(iii) B細胞成熟過程におけるLRBAの生理機能解析と結合因子スクリーニング、の3点を挙げていた。(i)に関してルシフェラーゼアッセイ等によりNF-κB経路との関連性を評価したが、大きな影響は見られなかった。しかしながら、IFN経路に対しては抑制的な影響が見られため、今後、詳細な解析が必要であると考えている。(ii)、(iii)に関しても実験を進めており、現状、大きな結果は得られていないが、より詳細な解析が必要と考えている。
2: おおむね順調に進展している
上記実施項目(i)に関して、ルシフェラーゼアッセイ等によりNF-κB経路との関連性を評価したが、大きな影響は見られなかった。しかしながら、IFN経路に対しては抑制的な影響が見られため、現在、そのシグナル制御の分子機構に関して詳細な研究を進めるため、KOマウス由来の各種細胞株の取得や入れ戻し細胞の構築などの準備を進めている。項目(ii)に関しては、培養細胞レベルで大きな影響が見られてなかったため、それ以上の解析は実施していない。項目(iii)については、KOマウスを用いて生理条件下での免疫グロブリン産生量や脾臓組織の形成、B細胞の発達段階を確認したが、野生型と比べて大きな差は見られ無かった。
今後は、項目(i)に関連して新たに見出した、IFN経路との関連性を、その制御機構から明らかにするとともに、項目(iii)とも連関して、生理条件下におけるLRBAの動物個体レベルでの生理機能、あるいは、ウイルス感染モデルなどでの機能解析を進めていく。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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