研究課題
LRBAはBEACH(Beige and Chediak-Higashi)ファミリーに属する約320kDaの巨大タンパク質で、過去にLPS誘導性や免疫細胞での発現が報告されたことから、新規の免疫因子と想定されている。2012年には、LRBAがB細胞機能異常を伴う免疫不全症の一つであるCVID(分類不能型免疫不全症; Common variable immunodeficiency)の原因遺伝子として報告され(Am J Hum Genet. 2012)、その後も、多様な免疫疾患と関連することが次々と報告されていることから(Science. 2015; J Allergy Clin Immunol. 2016; J Clin Invest. 2016)、疾患発症機序の解明、並びにLRBAの生理機能の解明が急務となっている。本年度までの解析から、LRBAが一部エンドソームと共局在する細胞質性のドット状の細胞内局在を示すこと、また、NF-κB経路には大きな影響を与えないものの、IFN-β経路を抑制することをCRISPR/Cas9法により構築したLRBA遺伝子破壊細胞の解析から明らかにし、さらに、オートファジーに対しては促進的な働きをする可能性を見出している。また、CRISPR/Cas9法により構築したLRBA遺伝子破壊マウスは、ヒトで報告された血中IgG、IgA、IgM量の低下は示さないものの、やはり、IFN-β経路の活性が亢進し、加えて多尿と関連した表現型を示すことから、LRBA遺伝子の単独破壊によってCVID様の表現型は惹起されないものの、特にIFN-β経路の制御において重要な生理機能を有すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度までの解析から、LRBAがIFN-β経路の活性制御に関わる事を培養細胞レベル及び動物個体レベルの解析から示す事ができ、当初の目的である「LRBAの生理機能を明らかにする」という目標に向けて、順調に進んでいると考える。
本年度までの解析から、LRBAがIFN-β経路の活性制御に関わる事を見出しているが、その詳細な分子機構については未だに明らかに出来ていない。LRBAは約320kDaと巨大な分子であることから、様々なタンパク質相互作用の足場となる「ハブ」として機能する可能性が考えられ、本現象においても抑制因子をリクルートすることで、IFN-β活性を抑制する事が想定される。この仮説に基づき、LRBAに結合する抑制性因子の探索と同定、及び同定した候補因子のIFN-β経路に対する影響を精査する。現在までに、LRBAがpolyICなどの認識に関わるRLRs(RIG-I-like receptors)やその関連因子など、複数の抑制性因子と結合することを見出しており、これらの点について精査を進める。
当初、H28年度に計画していた解析実験の一部が、H29年度に引き続いたため、その実施に伴う費用(物品費)をH29年度に繰り越した。
繰り越し分の費用は、該当する解析実験の実施に使用する予定であり、H29年度の物品費として計上する計画である。その他の、旅費、人件費・謝金、その他の費用については当初の計画通り計上する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://osaka-cu-1seika.umin.jp