研究課題/領域番号 |
15K08260
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低酸素応答 / CREB / 転写 |
研究実績の概要 |
前年度までに得られた野生型とCREB-KD細胞を比較した次世代シークエンサー解析のデータを基に、その発現量を指標としてCREB標的遺伝子のより厳格な条件での絞り込みを行い、166個(約1700個中)を低酸素慢性期にCREBによって制御される遺伝子と新たに定義した。この新たに絞り込んだCREB標的遺伝子の全てについて、上流1000bpまでの配列をデータベースから取得して、その領域のプロモーター解析を実施した。その結果、新たにCREB標的遺伝子と定義した群では、134遺伝子がプロモーター領域にCREB結合配列を所持していることが判明した。そこでこの遺伝子群についてqPCRによって低酸素下での発現誘導を検証した。さらに、この134個の遺伝子を染色体構造解析を実施するため対象と決定し、そのために必要なライブラリーの作製に着手した。これに加えて、低酸素選択性に作用すると考えられる、慢性的な低酸素環境下でCREBが活性化される分子機序の解析を進めた。古典的なCREBの活性化経路として知られるcAMP-PKA経路の阻害剤を用いた解析を実施したところ、低酸素下におけるCREBの活性化にはPKA経路は必須ではないことが明らかになった。そこで、PKA経路とは別にCREBの活性化に関与することが知られているMAPK・PKCファミリーのキナーゼに着目して解析を進めた。まずそれらの低酸素下における発現をqPCRを用いて検証したところ、これらのファミリーのいくつかの遺伝子の発現が上昇することを見出した。さらに、これらのキナーゼに対する阻害剤を用いた解析を現在進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに同定したCREBの低酸素特異的な標的遺伝子を、その発現量や野生型とKD細胞間での差異を指標にさらに絞り込みを進めて、次のステップである染色体構造解析の基礎となるデータを取得した。また、CREBの低酸素特異性を与える分子機序を明らかにするために、キナーゼに焦点を当てた研究を進めた。これらを実施したことで、本研究計画中の、低酸素下で選択的にCREBが活性化され、特異的な遺伝子発現を引き起こす分子機構に関する解析を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
CREBが低酸素下で選択的に活性化されるキナーゼを同定するために、阻害剤、ならびに、siRNAを用いたノックダウン実験を進める。また、その機構が判明し次第、CREBの選択的な低酸素応答性を消失させた細胞株を樹立して、その細胞の性質、ならびに、腫瘍の形成能を検証する。それに加えて、今年度取得した基礎データを用いて染色体構造解析を進めて、CREBの低酸素下での選択的な転写を規定するメカニズムとして染色体構造が関与する可能性を明らかにすることをめざす。また、CREBの活性化薬:Forskolinを用いた、古典的なCREB活性化経路における標的遺伝子の網羅的な同定を進めて、低酸素特異的なCREB標的遺伝子群と比較しながら低酸素性がんの亢進に働く遺伝子の特定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析を共同研究者に依頼したために、予定していた受託解析経費が不要となったため。また、動物実験を、実験の種別ごとにまとめて、短期間で遂行することができたために、本年度予定していた動物実験にかかる経費が、節減できた。
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次年度使用額の使用計画 |
CREBの標的遺伝子を同定するための網羅的な遺伝子発現解析経費、ならび、キナーゼを同定するための大規模な阻害剤・siRNAの購入に充当する予定である。
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