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2017 年度 実績報告書

慢性的低酸素環境において遺伝子発現を決定する選択的転写機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08260
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

中山 恒  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード低酸素応答 / CREB / 転写制御 / 慢性期
研究実績の概要

低酸素慢性期においてCREBが活性化される分子機構の解析を進めた。CREBの活性化はリン酸化によって引き起こされる。このリン酸化に働くキナーゼを明らかにするため、古典的経路でCREBの活性化に働く複数のキナーゼ阻害剤を処理したところ、キナーゼAの阻害剤で特異的にこのリン酸化が抑制されることが判明した。一方で、急性期の低酸素応答の活性化に働く因子をノックダウンしたところ、CREBの転写活性が低下することがルシフェラーゼアッセイより明らかになった。したがって、慢性期低酸素でのCREBの活性化は急性期を経てはじめて起こると考えられた。そこで、キナーゼAが低酸素急性期で発現誘導される可能性を検証したが、そのような傾向は見られなかった。さらに、急性期の活性化に働く因子のノックダウンでもCREBのリン酸化の減少は見られなかったことから、低酸素慢性期のCREB活性化を規定するのはリン酸化ではないことが明らかになった。CREBの活性には核内移行が必要であることに着目して、この分子機構の解析に新たに着手した。さらに、前年度までに同定した低酸素特異的なCREB標的遺伝子の中には、がんの悪性化に関与する分子も複数含まれていたことから、慢性期低酸素ががん形成に及ぼす影響を次に検証した。慢性期まで低酸素環境で培養した乳がん細胞は顕著なCREBの活性化を示した。ところが、この細胞を免疫不全マウスに移植したところ、腫瘍形成は抑制されることが明らかになった。CREBノックダウンがん細胞の転移能が低下していることは前年度に明らかにしたが、CREBの活性化はがんの増殖にはむしろ抑制的に働く可能性を示すものであった。一方、このがん増殖能の低下には代謝酵素PDHの発現が寄与することを明らかにした。今後は、本研究で見出した知見を基に、CREBがPDHを含むがんの代謝にどのように作用するのかを明らかにしていきたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Pyruvate Dehydrogenase PDH-E1β Controls Tumor Progression by Altering the Metabolic Status of Cancer Cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Yonashiro R, Eguchi K, Wake M, Takeda N, Nakayama K.
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 78 ページ: 1592-1603

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-17-1751.

    • 査読あり
  • [学会発表] HIFプロリン水酸化酵素Phd3が形成するタンパク質複合体を介した細胞内エネルギー代謝機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      中山 恒
    • 学会等名
      第17回日本蛋白質科学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 慢性的低酸素環境はピルビン酸脱水素酵素PDHの発現を低下させてがん細胞の解糖系に依存した代謝を誘導する2017

    • 著者名/発表者名
      與那城 亮、和氣 正樹、武田 憲彦、中山 恒
    • 学会等名
      ConBio2017学会
  • [学会発表] 慢性的低酸素環境においてピルビン酸脱水素酵素PDHの発現を制御する新たな分子機構の同定とそのがん性代謝確立における役割2017

    • 著者名/発表者名
      中山 恒
    • 学会等名
      がんとハイポキシア研究会
  • [図書] 細胞2018

    • 著者名/発表者名
      榎本 峻秀、中山 恒
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      ニューサイエンス社
  • [備考] 東京医科歯科大学 低酸素生物学HP

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/mri/section/advanced/oxy/labo/index.html

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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