研究課題
本研究はCanonical Wntシグナル伝達経路におけるWDR26を介したβ-cateninの分解機構の解明を目的とする。先行研究により、WDR26はβ-catenin の分解複合体を形成するAxin1と結合することが明らかであった。当該年度は下記の項目を実施計画とした。1)WDR26とAxin1との結合ドメインやβ-cateninの分解に関わるWD2の機能ドメインの同定。2)WDR26によるβ-cateninのユビキチン化部位の同定。3)同定された結合ドメイン等に関する、培養細胞やツメガエル胚を用いての機能解析の検証。4)Axin1以外のβ-catenin の分解複合体とWDR26の関連の検証。5)Wnt刺激の有無によるWDR26のタンパク質修飾の有無の検証。当該年度の成果として、WDR26のLisHドメインとAxin1のGSK-3β結合領域を含む中央部の領域でお互いのタンパク質が結合し、WDR26によるβ-cateninの分解は、Axin1との結合が必要であることが示唆された。また、WDR26によるβ-cateninの分解がWntシグナルの標的遺伝子の発現量の減少など、Wntシグナル伝達を負に制御することが明らかとなった。この段階で、WDR26がAxin1を介したβ-cateninの分解機構に必要なことが新規且つ重要な発見であったことから、原著論文としてFEBS Lettersに発表した。WDR26によるβ-cateninのユビキチン化部位の同定も完了間近である。また、WDR26はAxin1以外のβ-catenin の分解複合体構成タンパク質であるAPC、GSK-3βとも結合することを明らかとし、現在、WDR26のWnt刺激によるタンパク質修飾の変化に関する研究も進行中である。これらの成果は、次年度以後の原著論文として発表したいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
初年度の実施計画は予定通りに遂行され、研究機関全体での進捗度もおおむね順調である。WDR26がWntシグナル伝達経路においてβ-cateninの分解機構に関わることは新規の発見であり、初年度の研究成果の半分ほどのデータ量で、研究内容を原著論文として発表できたことは評価に値すると考えられる。初年度の残る研究データと、次年度の研究実施計画でのデータを合わせて、次年度中での原著論文の投稿も視野に入っており、研究は順調に進展していると評価できる。
初年度の研究計画がおおむね計画通りに進んだことにより、当初の計画通り、次年度は以下のような研究計画を遂行していく予定である。1)WDR26(GID7ホモログ)の結合タンパク質であるGID4、GID5、GID8の脊椎動物ホモログ遺伝子に関して、β-cateninの分解に寄与するかを検証する。2)他のGID関連のホモログ遺伝子に関してもβ-cateninの分解を調べる。3)以上のGID関連ホモログ遺伝子のβ-cateninの分解の分解機構、及び、Wntシグナル伝達での役割を解明し、初年度のデータと合わせて、取りまとめた論文を発表したいと考えている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
FEBS Letters
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Nat. Commun.
巻: 該当なし ページ: 該当なし
10.1038/ncomms11391