本研究はCanonical Wntシグナル伝達経路におけるWDR26を介したβ-cateninの分解機構の解明を主たる目的とする。 昨年度までに、WDR26(GID7相同遺伝子)との結合能を有し、WDR26と相乗的にβ-cateninの分解能を有するとして、GID2、GID9を特定した。当該年度は、引き続き、WDR26、及びGID関連遺伝子によるβ-cateninの分解機構を調べた。 その結果、WDR26以外ではGID1、GID2、GID8 、GID9の4つの遺伝子により、β-catenin の顕著なユビキチン化が確認でき、これら5つの遺伝子がβ-catenin分解時のユビキチン化を担っていることが推測された。また、β-catenin とGID関連遺伝子との結合を調べた結果、GID9のみがβ-cateninと直接結合し、GID9がβ-cateninの分解の鍵となることが予想され、現在GID9のβ-cateninとの結合領域の特定を行なっている。 さらに、昨年度にWDR26によるβ-cateninの分解時にユビキチン化されるリジン残基を7つまで絞り込んだが、当該年度にβ-cateninのユビキチン化部位が312K、335K、345Kの3箇所のリジン残基であることを特定した。GID1、GID2、GID8 、GID9によるβ-cateninのユビキチン化部位も同じであり、WDR26と4つのGID関連遺伝子が複合体を形成し、β-cateninをユビキチン化していることが強く示唆された。特定された3箇所のリジン残基のKRミュータントの解析より、この3箇所でのユビキチン化は既知のリジン残基(19K、49Kなど)でのユビキチン化よりも強く、β-catenin分解の中心的役割を担っていることが示唆された。 当該年度の研究内容は第11回ツメガエル研究集会で口頭発表いたしました。
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