研究課題/領域番号 |
15K08264
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中嶌 岳郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30581011)
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研究分担者 |
田中 直樹 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (80419374)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体分子 / スルファチド / PPARα |
研究実績の概要 |
本研究は、生体分子であるスルファチド(硫酸化糖脂質)の新たな代謝機構および生理機能(生体防御機能)を明らかにし、疾病治療・予防に有用な新しい情報を提供することを目的とする。 本年度は、肝臓で合成されるスルファチドが胆汁中へ排出される新たな代謝経路の解析に重点をおいた。まず、マウス肝臓のスルファチド合成を促進させる薬剤を4種類選定した(clofibrate, bezafibrate, fenofibrate, ciprofibrate)。これらの薬剤を投与量 100 mg/kg/day でマウスへ2週間投与した結果、肝臓および胆汁中のスルファチド含量は顕著に増加した。これらのマウスの肝臓では、スルファチド生合成の主要酵素(Spt, Cst)、スルファチドの細胞内輸送蛋白(Gltp)、および、胆汁への代謝物分泌を担うcanalicular transporters(Mdr1, Bcrp)の発現増加が生じていた。以上の変化は、核内受容体 PPARαの活性化と連動してみられ、PPARαがスルファチドの合成・輸送・胆汁排出を統括的に制御していることが明らかとなった。また、スルファチド胆汁排出のメカニズムを検索する試みとして、Mdr1・Bcrpの共阻害剤(elacridar)をマウスに投与する試験を行い、阻害剤投与により胆汁中のスルファチド含量が3割程度減少することを見出した。この結果から、Mdr1・Bcrpがスルファチド胆汁排出を部分的に担うこと、また、スルファチド胆汁排出を担う新たな分子(分子群)が存在することが示唆された。以上から、スルファチドが胆汁排出される新規代謝システムの分子基盤の一端を理解することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、スルファチドが胆汁排出される新たな代謝経路の分子機序の一部を明らかにした。また、核内受容体 PPARαが肝臓におけるスルファチドの合成・輸送・胆汁への排出を統括的に制御する新しい仕組みを見出した。一方、当初計画した酸化ストレス負荷マウスを用いた試験は、上記の研究を優先させたため、次年度に延期した。以上を総合して進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、スルファチド胆汁排出の生理的意義を明らかにするための研究を進める。具体的には、スルファチド胆汁排出が酸化ストレスに対する生体防御反応の一環である可能性を検証する。そのために、酸化ストレス負荷を与えたマウスを用いて、酸化ストレスの状態変化とスルファチド合成・排出量の変化を調べる。また、酸化ストレス制御およびスルファチド合成と強く関連する硫黄代謝に着目し、硫黄代謝変動物質がスルファチド合成・胆汁排出に与える影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて消耗品費として使用する。
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