研究課題
スルファチド(硫酸化糖脂質)の発現・代謝において、酸化ストレスが与える直接的な影響を調べるため、培養細胞を用いた検討を行った。ヒト肝癌由来細胞株 HepG2細胞には約8 nmol/mg protein のスルファチドが存在し、このうちの約7割は SM3 (lactosylceramide sulfate)、3割弱が SM2 (gangliotriaosylceramide sulfate) であった。SM4s (galactosylceramide sulfate) はほとんど検出されなかった。各スルファチドのスフィンゴイド組成はd18:1型が9割以上を占めた。HepG2細胞に多量のSM3が発現することは過去に報告されており、過去の報告と一致する結果が得られた。続いて、HepG2細胞を過酸化水素で処理し、酸化ストレス負荷に対応してスルファチド発現量に変化が起こるか否かを検証した。無血清DMEM培地に過酸化水素を最終濃度0-1000 uMの範囲内で添加し、HepG2細胞(約80% confluency)に対して24時間処理を行った後、細胞を回収し、スルファチド発現変化を調べた。その結果、スルファチド発現量は過酸化水素低濃度域で微増し、高濃度域において顕著に低下することが分かった。以上から、スルファチドの発現は酸化ストレスに応答して変化すること、また、強い酸化ストレス負荷を受けた場合には、その発現量が減少することが示唆された。
すべて 2017
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Tohoku J Exp Med
巻: 242(3) ページ: 229-239
10.1620/tjem.242.229