研究課題/領域番号 |
15K08266
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
瀬川 勝盛 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門助教 (20542971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フリッパーゼ / 細胞膜 / ホスファチジルセリン / P4型ATPase |
研究実績の概要 |
本年度は細胞膜で機能するリン脂質フリッパーゼを同定することを試みた。ATP11C が属するP4 型ATPase ファミリーメンバーにフリッパーゼとして作用する分子が存在する可能性があることから、ATP11C 欠損細胞にP4 型ATPase ファミリーを発現させ、細胞膜における蛍光標識ホスファチジルセリン(NBD-PS)の移層活性を測定した。その結果、ATP11Cの他にATP11A、ATP8A2がNBD-PSを細胞膜の内層へ移層させた。実際、これらのタンパク質を精製し、試験管内でATPase活性を測定したところPSの存在下でATPase活性が強く上昇した。以上よりATP11C, ATP11A, ATP8A2が細胞膜PSフリッパーゼとして機能することが示唆された。ATP11Cはアポトーシスに陥る際に、分子中央部分でカスパーゼによる切断・分解をうけることで不活性化される。ATP11Cと同様に、ATP11Aは分子中央部分で実行型カスパーゼにより切断されるが、ATP8A2は切断されなかった。カスパーゼと同様に、ATP11AおよびATP11CはカルシウムによりATPase活性が阻害されるが、ATP8A2のATPase活性はカルシウムの上昇に対し抵抗性を示した。これらの結果と一致するように、内因性のATP8A2が発現しないTリンホーマ株にATP8A2を発現させると、アポトーシスの際にPSを細胞表面に露出しなかった。ヒト、マウスにおける遺伝子発現を解析した結果、ATP11AおよびATP11Cは全身性に発現しているがATP8A2は精巣や脳など限局した発現パターンを示した。以上より、ATP11CおよびATP11Aがユビキタスに発現するカスパーゼーカルシウム調節性の細胞膜フリッパーゼであること、ATP8A2はこれらのフリッパーゼとは異なる細胞において異なる制御を受けることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜で機能するリン脂質フリッパーゼの生化学的な解析を行い、論文に報告した (Segawa K, et al., JBC, 2016)。実験計画にある、P4型ATPaseのシャペロン分子であるCDC50Aに対するモノクローナル抗体の樹立も進行中であり、遺伝子改変マウスの解析の準備も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
細胞膜におけるリン脂質の非対称性の分子機構について解析を進める。CDC50Aに対するモノクローナル抗体を作成し、免疫沈降法などを用いてCDC50Aに結合する分子を解析する。また、組織得的なCDC50A欠損マウスの樹立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に作製した安定発現細胞株を用いた実験が主となり、大きく培養関連消耗品を使用することがなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞を大量に使用する生化学実験を計画していることから、培養関連の消耗品を大きく使用することになる。具体的には血清および培地の購入、さらに生化学実験で使用する界面活性剤や抗体の購入、マウス関連実験にかかる費用などで次年度使用する見込みである。
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