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2015 年度 実施状況報告書

ヒトES/iPS細胞の多能性維持におけるPRDM14の作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08267
研究機関京都大学

研究代表者

小島 洋児  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点助教 (70720811)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード多能性維持機構
研究実績の概要

まずPRDM14を薬剤(ドキシサイクリン; Dox)依存性に発現させるための遺伝子組み込みを行い、野生株と同等のPRDM14の発現量と薬剤なしの時の発現漏れの無いクローンを選択した。この細胞株に当初作成したTALENとドナーベクターを用いて遺伝子組み換えを試みたが、導入効率が悪かったため、i) 致死遺伝子の配置の変更し、ii) 両アレルのノックアウトのために2種の耐性遺伝子(Puro, Hygro)で2種のベクターを作成し直した。その結果両薬剤耐性のコロニーが多数得られ、PCRスクリーニングで44/170 (25.9%)において両アレルの組み替えが確認でき、うち15クローンでランダムインテグレーションが検出されなかった。これらのうち6クローンをサザンブロッティングにて確認したところ、4クローンで異常なバンドの検出されないノックアウト株が作成できた。
続いてこれらの株の性質評価を行った。いずれも染色体数は正常で、Dox投与下においてはコロニー形態も明らかな異常を認めなかった。qPCRで遺伝子発現を確認したところ、外来PRDM14の発現も確認され、POU5F1, NANOGの多能性遺伝子の発現も親株と同等の発現量であったが、一部の遺伝子で親株よりも発現が低かった。転写因子や表面抗原の発現量をFACSでも比較したところ多くは親株と同レベルであったが、一部で親株と比較して低下しているものも認めた。現在はDoxによる過剰発現にもかかわらず多能性が一部低下していると考えられる原因を探索している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

一年目ではベクター調整から細胞株の作成まで到達したが、一旦ベクターを作成し直す必要性も生じ、このプロセスで遅れが生じた。以降は基本的な性質の評価までは順調に進んできたが、現段階ではDox依存的にPRDM14が発現しているにも関わらず、多能性の性質が一部低下していることが観察され、この原因の究明と並行して、別の親株からのノックアウト作成を行っていく作業を予定している。
このように当初予定していた一年目で二株からノックアウト株を作成して基本的な性状解析を完遂する、という予定からは、ベクターの再調整を行う必要など、複数の障壁を解決していく必要があったために遅延しているが、ノックアウトの作成が可能なベクターは完成しているので、こちらをもとに早急に新たな株の作成を進めることと、性状解析やシークエンスによる発現遺伝子解析などの予定している実験を進めていきたい。

今後の研究の推進方策

一つのヒトiPS細胞の親株から、PRDM14を薬剤依存的に発現調節のできるノックアウト株を作成できたため、本年度は、この株を用いてRNAシークエンス解析を行い、さらにはPRDM14のiPS細胞におけるゲノム上の結合部位の同定のために、PRDM14に結合させたタグを用いてクロマチン免疫沈降シークエンスを行うための条件検討を進める。また別の親株からも同様にPRDM14の発現を調節できる細胞株を作成して、本年度中の性状解析、RNAシークエンス、免疫沈降シークエンスの完了を目指す。これらのデータよりPRDM14がヒトの多能性の状態でどのような遺伝子の発現調節を制御して多能性の維持に関わっているのか、あるいはiPS細胞が分化を開始する際に、どのような遺伝子群の発現を調節しているか、を明らかにしていく。
来年度以降にはPRDM14のDNAメチル化制御を明らかにするために、bisulfite sequenceあるいはmicroarrayなどを用いて解析を行う。これらのデータを総合して、ヒトiPS細胞の多能性におけるPRDM14のエピゲノム調節の全体像の理解を進め、マウスの先行研究のデータとも照合することによって、マウスでは大きく二つに分けられる「ナイーブ型」と「プライム型」の二つの多能性の差が、ヒトにおいてはどのように制御、維持されているかを解明していく。

次年度使用額が生じた理由

当初一年目に予定していた遺伝子発現解析のためのRNAシークエンスが二年目にずれ込むことになったため、その経費分を二年目に使用することとした。

次年度使用額の使用計画

上記のようにノックアウト細胞株が完成してからシークエンス解析を行いたく、次年度に使用する予定とした。

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公開日: 2017-01-06  

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