唾液腺の発生過程において、Wntシグナル活性は分岐形態形成を認める発生前期で最も高く、発生後期の腺房分化に向けて経時的に減少した。発生前期におけるWntシグナルの活性化はSCF受容体であるKITの発現を抑制することによって腺房分化の進行を抑えていた。発生後期ではWntシグナル活性の減弱にともなって、end budにおけるKITの発現が上昇し、AKTの活性化を介した腺房化が誘導された。本研究から、WntとKITシグナルの活性化バランスが器官形成過程における“形づくり”から“分化(機能獲得)”へのスイッチングを調節する新たな機構が明らかになった。
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